意識の2つの傾向と4つの機能

人間の意識の2つの傾向(外向型と内向型)

これからユングの心理学を簡単に説明するにあたって、まずはユングが考えた人間の心の傾向や機能論というものから書いていきましょう。ユングの提唱した理論では、人間が他者と交流するとき、その行動や意識は、大きく2つの傾向に分ける事が出来ると考えます。

一つは外向型と呼ばれるもの、もう一つは内向型と呼ばれるものです。この区分けは現在、一般的にも「あの人の性格は外向的だ」という使われ方で広まっているので聞いたことがある人も多いでしょう。ただ、本来のユング心理学では、もうちょっと違った見方をします。

この2つのタイプは、その人物が物事を決めるときにその判断を自分の外側に求めるか、内側に求めるかによって決まるものだとしたのです。外向型の人は物事を決定するときに、人の意見や様々な情報を主な判断材料として用いるタイプ。内向型の人はまず、自分自身がどう思うかを主な判断材料として用いるタイプと言えるものです。

外向型
内向型
外界の情報を重視するタイプ 自分自身がどう思うかを重視するタイプ

人間の意識の4つの機能(思考、感情、直観、感覚)

次に、ユングは人間の意識が持つ機能を大きく四つに分ける事が出来るとしました。「思考、感情、直観、感覚」がそれです。人は、この4つのうちのどれか一つの機能を優位的に使い、物事に対して処理していくとしているのです。

「思考」の機能

まず最初の「思考」という機能は、言語的で合理的な考えを優先して物事を理解しようとする事を指します。よく一般に言われる知的な働きといえば理解しやすいでしょうか。この機能が発達しているタイプの人は物事が正しいか、正しくないか等という事柄を重視します。

「感情」の機能

次の「感情」は、対象にたいして自分が抱いた喜びや優しさ、好きや嫌いなどの感情を元に物事を理解しようとする機能を指します。

ただ、ここで、この感情という機能に対して注意しておいて欲しい事があります。よく、一般的には「感情的な人」というと、ちょっとした事で激怒したり、何でも無いことで大泣きしたりするような人を指して「感情的」と呼ぶことがあります。そのため、感情の機能が発達してる人というと、そういった感情を爆発させやすい人のことをさしていると一般には考えてしまうでしょう。

しかし、ここでいう「感情」の機能を発達させている人とは、その逆なのです。本当に感情の機能が発達している人は、自分の感情を上手くコントロールすることが出来るため、そういった感情を制御出来ないといった事は滅多に無いものなのです。

以上、これら2つの機能、思考と感情は対になっているものであり、どちらかの機能が得意な人は、その逆が不得手になるとされています。

「直観」の機能

3番目の「直観」は言語的な考えを経ずに、直接的に物事を理解しようとする機能をさします。俗に言う第六感的なものであり、全体的な知覚により、物事を処理するタイプです。

「感覚」の機能

そして最後の「感覚」というものは、五感により得られるものを大事にする機能をさします。直観は意識に直接理解をするため、頭の回転は速いのですが落ち着きが無く、感覚は五感の情報を元にするため物事をゆっくりとですが、じっくりと処理していくタイプです。こちらの直観と感覚の機能も、対になっており、どちらかが発達しているタイプは、どちらかが未発達なものとされています。

思考
感情
物事を思考してから処理するタイプ 物事を自分の価値判断を元に処理するタイプ
直観
感覚
直接理解を元に処理するタイプ 五感の感覚を元に処理するタイプ

傾向と機能の組み合わせ

ユング心理学では、ここに説明した基本的な2つの傾向のうちどれかと、4つの機能のうちの優位な心のはたらきを組み合わせて、様々な人の性格を説明する事がよく行われます。例えば、「外向的・感情」タイプの人は、あけっぴろげで感情を表に出し、人とよく接するのを好む人。内向的思考タイプの人は、人の意見よりも自分自身を大事にし、もっぱら自分が好む思索に耽るような人をさすとされるのです。


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