錬金術の基本理論、錬金術の金属の七惑星への配属<IMN魔術基礎知識05>

錬金術の基本理論

錬金術と占星術は人類にとって、もっとも古い2つの知識・技術大系と言えるだろう。その内には人類が発祥から積み重ねてきた薬学、本草学、化学、鉱物学などの自然科学の原始的な知識が含まれ、近代科学を産み出す元となったのだ。

錬金術は古代エジプト文明の頃には始まっていたとされる。その当初の目的は様々な物質の特性や法則を見出し、人間の思うように変化させようとするものであった。やがて、その探求の方向性は物質や人間に潜む意識を対象にしたものに移っていく。錬金術師達の間でより重要視されたのは、その対象を物質的な金へと変化させる事ではなく、物質や人間など様々な存在に潜む「意識」を「金」に象徴される至高の段階へと進化・完成させることだったのだ。この為に錬金術師達はこの世界を探求し、そこに様々な理論を見いだした。

錬金術の大きな特徴の一つとして、その関連する書物を読んでいると、錬金術師によって様々な矛盾する理論を提唱している事が多い事があげられる。これが、錬金術に関する研究を妨げる大きな障害ともなっているのだ。しかし、そんな中でも多くの錬金術師に共通して認められる基本的な理論がある。ここでは、そのうちの幾つかを下に紹介しておこう。


・宇宙は神に源を持つ。宇宙は完全なる一つの神的存在からの流出であり、それゆえに全ては根本的には一つである。
・全ては相反する二重性を持って顕現する。
・上なるものの如く、下なるものも。下なるものの如く、上なるものも。
・全ての物質的顕現はsoul、spirit、bodyの三段階から成り立つ(日本的に言えば、魂、魄(霊)、物質(肉体)といえよう)
・全ての物質は三原理(水銀、硫黄、塩)の比率により成り立つ。
・全ての錬金の作業は「分離」「純化」「再結合」の三つの過程から成り立つ。
・全ての物質は四大の状態(火:プラズマ、風:気体、水:液体、地:固体)より成り立つ。
・全ては「神」として「完成」へと向かうように運命づけられている。

錬金術の金属の七惑星への配属

錬金術師は、金属や鉱石も植物や動物と同様に「意識」を持つものとして見ていた。その意識の段階は、彼らがよく扱う七つの金属になぞらえられ、そして七つの惑星に配属された。錬金術的には七惑星の記号は、完成へと至る意識状態を象徴的に示しているのである。

惑星の記号は古代より様々な変遷を経て来た。しかし現在は、ほぼ標準的な記号が定まっており、その基本的な要素を3つに分けて見る事が出来る。1つめは太陽を示す丸(○)の記号。2つめは月を示す記号。3つめは四大あるいは地球を示す十字の記号である。先の項にて説明した錬金術の基本理論的に見ると、丸の記号は魂を示し、月の記号は霊を意味する。そして、十字は物質を意味するものとなる。錬金術的には惑星記号は、この3つの要素が組み合わさり、ある段階の意識状態を示しているものとして見ることが出来るのだ。

例えば、土星の記号は物質を意味する十字の下に、霊を意味する月の記号が位置する事により、物質が霊を支配する物質上位、物質に束縛された霊を意味する事になる。木星の記号は物質を示す十字から霊を示す三日月が昇ってくる様を示す。火星の記号は魂を示す○の記号の上に物質を示す十字の記号が位置する事によって、物質が魂を支配する状態を意味する(現在、一般的に見られる火星の記号は丸の斜め上に矢印がついたものだが、この場合は丸の上に十字がついた象徴を考える)。

逆に金星は十字の記号の上に○の記号が位置する事によって、魂の物質に対する勝利の状態を意味する。そして、水星の記号は魂と霊と物質が結合し調和している様を示す。惑星の記号については、こういった解釈を行う事も出来るのだ。

ここでは、七惑星と金属の配属も紹介しておこう。これらの配属に関しては流派によって色々な見方があるが、当サイトでは基本的に以下の配属を用いる。この表はまた錬金術師達が考えた意識のレベルも示している。最下層には鉛が位置するが、鉛は物質に閉じ込められた霊を象徴し、様々な錬金の作業によって黄金に象徴される、霊と魂が解放された段階を目指すのだ。

惑星 金属 記号
太陽 黄金
水星 水銀
金星

真鍮
火星
木星

(スズ)
土星

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