魔術の「目的」による分類

まずは魔術をその「目的」によって分類してみよう。

願望実現目的

これは広義に考えると魔術を行う目的としては、ほぼ全ての範囲を含んでしまう事になる。しかし、ここで指しているものは個人や集団が、主に一般的な欲望に基づく願望を叶える事を目的としたタイプだと考えてほしい(例えば、お金が欲しいとか、恋人が欲しいetc)。多くの人が魔術を学ぶ目的として挙げるものであり、時代や場所と共に様々な技法が生まれてきている。

哲学的探求目的

古来より人間は「自分の生まれてきた意味とは?」「この世界は何の為にあるのか?」などの根本的な疑問を、その心の奥に抱いてきた。それは容易に答えの出るものでは無く、多くの人を果てしなく長い探求に駆り立てたのである。

そして、その中の一部の人達はその答えを現実の知識だけで無く、「隠された」知識=オカルト:Occult、あるいはその中でも特に実践的な分野である”魔術”に求めようと考えた。ここに分類するものは、そういった目的で魔術を学習するタイプを指すと考えてほしい。また、人生における哲学的規範を魔術に求めるタイプも含む。

霊的探求目的

現代の科学的文明に生きている人々にとっては、なかなか理解できないことかもしれないが、世界は様々な霊的な存在で溢れている。通常はそれらを感知することは出来ない事が多いが、特殊な意識状態になると、多くの人がそれらの存在と交流することが出来る。

古来より、こういった存在たちと意識的にせよ無意識的にせよ、交流してきたもの達は数多く存在し、その得た知識を秘密の教えとしてオカルトや魔術の知識体系の中に残してきた。ここに分類するものは、それら霊的知識についての学習、研究を目的とするタイプである。

科学的探求目的

人間の意識に関わる分野は、現代の科学でもまだまだ未知の事柄が多い。しかし、魔術というものを学習すればわかるが、人間の意識の様々な未知の事柄を、魔術はその「経験知」によって説明できる事も多いのだ。ここに分類するものは、主に、その意識というものの探求を魔術の知識や技術などを手がかりにして、出来る限り「科学的」に解き明かしていこうという事を目的としたタイプである。

現実的能力開発目的

魔術という実践学習大系には、視覚化や集中法などの基礎的能力の訓練法から、隠された意識の深みに潜り、そこに棲む様々な意識の諸力と接触するという段階に至るまで、人間に潜められた様々な能力を開発する技法がある。ここに分類するものは、それらの特に現実的な能力開発を目的としたタイプを指す。

超能力開発目的

魔術というと、一般的に呪文を唱えただけで炎や氷を出して敵を攻撃したり、病人を一瞬にして回復させたり死人を蘇らせたりするなどの超常的なイメージが、よくついて回る。ここに分類するものは、上記の現実的能力開発目的と対比して、現実世界の法則を越えた超能力的な能力を得ようとする目的のタイプを指す。

知的好奇心目的

昔から魔術やオカルトというものには禁断の知識が隠されているというイメージがあった。そういったものへの憧れ、知られざる知識を学んでみたいといった目的から魔術を研究するタイプをここでは指す。また、このタイプは2通りに別れ、1つは、ただ魔術書などを読むだけの知的探求として行うタイプ。そして、もう1つは実際に、魔術の訓練を行ってそこから超現実的な知識も得ようとする実践的探求も行うタイプである。

創作物の題材としての研究目的

昔から、魔術というものは、その不思議な知識や力によって多くの人を魅了してきた。最近、特に漫画や小説、アニメなど、多くの創作物に題材(ネタ)として魔術に関する知識が取り入られるようになっている。上の知的好奇心目的と重なるところも大きいが、ここに分類するものは、そういった創作物に用いる題材として、魔術に関する知識を知ろうとする目的のタイプを指す。

ファッション、雰囲気を楽しむ目的

魔術のイメージの一つとして、中世ヨーロッパの怪しいものやゴシックなどのイメージを思い浮かべることも多いだろう。また、魔術においては様々な護符や魔術用具、魔法円などの一般的な人から見ると怪しげなアイテムもよく扱う。人によっては、そういった怪しげな雰囲気に浸るのを好んだり、憧れたりする方もいる。ここに分類するものは、魔術を知ることにより、そういった雰囲気、ファッションを楽しみたいとか、浸りたいといった事を目的とするタイプを指す。

倒錯欲望目的

昔から黒魔術と聞くと、そのイメージとして、深夜に人から見つからない場所で黒ミサを行い悪魔を崇拝したり、乱交を行ったりするというものが思い浮かべられる事も多かった。ここでは、そういったイメージをそのまま捉えて、倒錯した欲望を満たす目的として、魔術を学習したり実践したりする事を目的とするタイプを指す。

復讐の為の方法目的

現在、魔術というものは一般社会的には効力の無いもの、無意味なものとされている。その為、現実世界で迫害を受けた人が法律などで罰されずに復讐するために、魔術にその手段を求めようとすることがある。ここでは、その目的で魔術を行おうとするタイプを指す。


以上、魔術を学ぶ目的をいろいろと分類してみた。しかし、実際に人が魔術を学ぶ際には、このどれか一つのみの目的で魔術を学ぶ事はあまり無く、複合的な目的を持つことが多いものである。

例えば、当サイト作者が魔術を学んでいる目的としては上記のうち、霊的探求目的を主としているのだが、他にも願望実現や哲学的探求、知的好奇心、創作物題材研究目的などの要素も研究の範囲に含んでいる。当然、IMNの扱う「魔術」の目的もその作者の目的と似たようなものになる。学徒も理解しておいてほしい。


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