魔術の「方法」による分類

ここでは魔術を、その「方法」によって分類してみよう。

儀式魔術

ある連続した一定の所作を行ったり、呪文を唱えたりする事によって、何らかの効果をこの世界に及ぼそうとする魔術の形式を言う。現在、一般的に魔術を行うというと、まずはこの儀式魔術が思い浮かぶ事が多いであろう。また、他の魔術技法の基盤ともなるものである。一口に儀式魔術といっても、カバラ十字や小五芒星儀式などの小規模なものから、様々な用意を行って長時間に渡って儀式を行うといった、とても大規模なものもある。

召喚魔術

神々や天使・悪魔、精霊といった霊的な存在をある一定の所作や儀式を用いて、自分の意志するところに呼び出すものである。最近では、魔術を心理学的に解釈する研究も進んできて、「召喚魔術」とは人間の深層意識に潜む、ある心理的機構を天使や悪魔に見立てて、それらを呼び出し制御するものだという説が主となってきている。

しかし、実際に召喚魔術というものを行って、天使や精霊などと接したものは、それが心理的機構という説だけに収まるものではなく、一つの実在する不思議な存在を呼び出すものであると感じられるだろう。

護符魔術

何らかの物体あるいは存在に、特定の目的の為の秘力を充填して使う魔術である。簡単にいえば、お守りのようなものであるが、魔術においては、古くより様々な作成法や使用法が深く研究されている。

アストラル魔術

多くの魔術体系では、魔術が力を発揮する原理として星幽光(アストラル・ライト)というエネルギーの存在を主張する。また、その重要な修行法として星幽体(アストラル・ボディ)という、もう一つの身体を作り出す方法を訓練し、その身体を用い、星幽光により成り立つ世界である星幽界を探求したり、様々な方法により星幽界を変化させ、その影響を現実界にまでもたらそうとする。そういった星幽光を制御する面に焦点を当てた魔術のことを、アストラル魔術とする。

カバラ魔術

唯一神(YHVH)を信仰するユダヤ教に古くから伝わる神秘主義にそのルーツを持つ魔術である。元々、旧約聖書はヘブライ語などで記されていたのだが、ヘブライ語の文字はそれ自体が数価を持つ。その為、旧約聖書に書かれし単語や文章は数価により変換されるなどの操作を経ると、主や、その創られしこの世界の秘密を解き明かすことが出来ると考えられた。

こういった文字や数価の制御を元にして瞑想や様々な技法を用いて、旧約聖書に秘められし謎を解き、主(唯一なる神)への理解をより深める、あるいは合一化を目指そうとした実践的なユダヤ教神秘主義は、カバラと呼ばれ発展してきたのである。そして、このカバラはルネサンスの頃までは、ユダヤ教徒のみの間で発展していたが、ルネサンス以降、カバラの有用性を見出したキリスト教徒などにも、このカバラは研究されることになる。

このキリスト教徒によって変化・研究されたカバラは非ユダヤ教徒のカバラとして、クリスチャン・カバラあるいはオカルト・カバラなどと呼ばれるようになり、現在、カバラ魔術として西欧神秘伝統の大きな流派の一つとなっている。

グリモア魔術

グリモア、あるいはグリモワールとは西洋に古来より伝わる、様々な魔術を記してきた「魔術書」あるいは「魔道書」「魔導書」の事を指す。有名なところでも、「ソロモンの大きな鍵」や「ソロモンの小さな鍵(ゲーティア)」、「レメゲトン」「アブラメリン」「グラン・グリモア」「グリモリウム・ヴェルム」「モーセ第6、7の書」「アルマデル」「大アルベルトゥス」など様々なものがあるが、その多くは現世利益を成就するために様々な霊的存在(天使や悪魔、精霊など)を呼び出したり、秘密の呪文や護符などを扱う方法が記されている。

現代の考え方ではこれらは、ただの迷信として一笑に付されることが多い。しかし、古来より伝わるこれらの知識は、何かの霊的秘密を象徴的に記したものであるとか、人間の意識の奥に潜む「元型」を示すものであると解し、これらのグリモアの知識を現代的な魔術の応用法として使う方法を、グリモア魔術と呼ぶ。

占星術魔術

元々、占星術の考え方は魔術の基本原理としてあるが、ここでは、その占星術的考え方やシンボルを特にその実践技法の中心として扱うものを指す。ホロスコープによる判断を元に、惑星や十二宮の護符を用いて不運を遠ざけ幸運を呼び寄せようとしたり、自己の能力を増強したりなどの技法が用いられる。

エノク魔術

ルネサンス期のイギリスの天才学者ジョン・ディーが霊媒のエドワード・ケリーを通じて天使から授かったという知識を元に作られた魔術。天使の言語と呼ばれるエノク語を用いて、様々な魔術作業を行う。

物質的攻撃魔術

よく漫画・アニメやゲームなどに出てくる、炎や氷・雷などの物質的手段を用いて、敵に攻撃するものだ。一般的に魔術というものに憧れる人達は、このタイプの魔術に憧れる事も多いだろう。しかし残念ながら(?)、西欧の神秘伝統の魔術においては、呪文を唱えていきなり炎を呼び出すなどの物質的な法則に思いっきり反する現象を起こすことは出来ない。その点は学徒もよく認識しておいてほしい。

精神的攻撃魔術

人形や写真を相手に見立てるなどして、物質的手段によらない術者の念や意識などの方法で、相手に害をなそうというものだ。黒魔術や呪術とも言われるものである。これはよく魔術の理論を理解し、また意識を鍛練しているものなら、ある程度可能といえよう。

これは、物質的な法則に反すると思われるかもしれないが、西欧の神秘伝統的な魔術を研究している人達の間では、何かまだ現在の物理学では発見されてない意識のエネルギーみたいなのがあり、それが作用しているのでは無いか、と考えたりもされているのだ。しかし、それもよっぽどの事が無い限り、何年もずっと恨みつづけてようやく、相手が心身に不調をきたすかもしれないといった微々たる事しか起こせないものである。

治療魔術

漫画やゲームなどでは、負傷したものを瞬時にして癒したり、老化や死が避けれるなどといったイメージが広まっている。しかし、前記と同じく、このHPで扱う魔術においては物質的法則を大きく無視したことは、まず出来ない。

しかし、魔術の訓練によって精神力を高め、それにより生命力を活発化して自己治癒力を増したり、自分の体に流れている精妙な生命エネルギーを制御して病人に与え、その病人の病気の治りを早くするといった事などは、ある程度可能といえよう。現実に中国では、こういった生命エネルギー=「気」を制御して医療に役立てようという試みが公的に行われている。

性魔術

性の力を扱う魔術を指す。一般的には男性と女性の交合により、生まれる莫大なエネルギーをある目的の実現に向けて使われるものとされるが、普通はその性質により、あまり公に語られる事が無いものである。

ブードゥー

ハイチを中心に広まっている魔術的な宗教である。一般的に白人キリスト教徒に虐げられた黒人奴隷達が復讐のためによく崇拝したため、人間の闇の面に関する術が多いのが特徴である。その中でも特に有名なものとして、死者を蘇らすゾンビの術などがある。

ルーン魔術

北欧に古くから伝わる、ルーン文字と呼ばれるものを中心にした魔術である。ルーン文字1文字を象徴としてエネルギーをおこす魔術や、ルーン文字を数文字組み合わせて使う魔術、それぞれのルーン文字に付された聖歌を使う魔術などがある。

東洋魔術 (Oriental magic)

一般的に西洋の魔術師たちが、神道や道教などのアジア系の術を総称するときに使う言葉である。反対にヨーロッパ各地の魔術や高等魔術などを全てひっくるめて、西洋魔術といって済ましてしまう事もある。

自然魔術

一般的に高等魔術及び儀式魔術が、ある閉鎖された部屋や空間で神や天使などの存在にたいして行われ、決められた手続きが多いのに対し、自然魔術は大自然の中などで、自然と一体化しながら自分の魔術的意識のおもむくまま、自由に魔術を行うものとみなされている。

死霊術

既に死んでいるものの霊を呼び出し、その霊から過去や未来の出来事など様々な知識を得ようとする魔術である。また、既に死んだものを復活させ、それを自分の命令のままに操る術もこれに含まれるといえるだろう。


ここでは、様々な技法を紹介してみた。上記の分類を使うと、IMNが研究の目的とする技法は儀式魔術をベースに召喚魔術、護符魔術、アストラル魔術、カバラ魔術、グリモア魔術、占星術魔術、エノク魔術、霊的な錬金術などを行う。

しかし、これらの技法を実際に効果のあるものとして行えるようになるには、まずは様々な秘教的知識を学び、瞑想や各種能力開発の基礎的な実践学習を長い期間行うことになるので、学徒も認識しておいてほしい。


次へ
上位ページに戻る