実践魔術講座リフォルマティオ<IMN的魔術学習参考邦書解説>


日本において黄金の夜明け団の理論と実践を主体とした「魔術」の学習を行おうとする者は、是非、読んでおきたい書。この本に収録されているのは、秋端勉氏率いる団体「魔術の学院I∴O∴S∴」が、これまでに培ってきた、入団を希望する者に対する教育用のテキストの集大成である。また、実際にI∴O∴S∴に入団を希望しないものでも、魔術の学習を志すものとしては、この本は海外でも類を見ないくらい、学ぶべき知識と実践の方法が豊富に、細かいところまで書かれている一級の資料といえるので、是非、目を通しておいてもらいたい。

この本は以前、1998年に碩文社という出版社から販売されたが絶版になっていたものを、2013年に三交社から「リフォルマティオ」と銘打って再販されたものである。両者を見比べると、リフォルマティオは大幅に加筆されており、プロベイショナー段階の学習に対するI∴O∴S∴の研究の進み具合が見て取れ、興味深い。

この本の中身は、上下巻に別れている体裁を取っており、上巻はI∴O∴S∴のプロベイショナー向け教育用テキストの集大成。また、下巻の方はI∴O∴S∴の研究成果である、儀式についての研究論文。また、その集団としての活動から得た集団儀式用の文書、そして、秋端氏がこれまで発表してきた様々な小論が収められている。

魔術の学習を志す場合には、とても参考になるものであるが、ただ、私の個人的な意見としては、この本は魔術の「全くの初学者」にはオススメ出来ないと思われる。

その理由として、まず第1の点としては、この本は元々、I∴O∴S∴に入団を希望するもの向けに書かれたものである事が挙げられよう。I∴O∴S∴は、その入団の対象者として、一般に入手できる入門書籍くらいは、学習を済ませておくくらいの予備知識と熱意を持った学徒を想定しているとの事である。

次に第2の点として、筆者である秋端氏の趣向で、この本に載っている学習の内容は、ユダヤ教(ユダヤ教神秘主義)の宗教的な学習の方向に、やや偏っている面がある。もちろん、西欧神秘伝統には、ユダヤ教神秘主義が重要な影響を及ぼしている事は否定できない。しかし、現在の日本で西欧神秘伝統に興味を持ち学習を志すものは、ユダヤ教の宗教的な体系に、そこまで重点的に興味を持つ事は、あまり無いと思う。学徒は、この本を読む場合は、その辺りも考慮した方が良いであろう。

第3の点として、秋端氏の最新の研究結果だろうと思われるが、様々な心理学的な知識や技法が盛り込まれている。しかし、これらの知識は当方としては初学者にいきなり学習させるのは、難しく感じると思われるのだ。これらの知識自体は、ある程度学習の進んだ学徒の更なる学習のための資料としては、とても有用なものであろう。しかし、プロベイショナーの段階の学習としては、もっとすっきりとした学習で纏め、これらの心理学的知識や技法は、もっと先の段階か、あるいは補足資料とした方が、初学者には理解しやすいのではないだろうかと思う。

以上が、この本が魔術の全くの初学者には不向きな点として挙げられるだろう。これらの点に注意して、この書籍を実際に読む前には、あらかじめ、その予備的知識を得るためにネットなどで基礎的な西欧神秘伝統などについての知識を学習しておくことである。現在は、検索すれば、ネットだけでもかなりの知識を得ることが出来るであろう。この本は、そういった基礎的な学習を終えてからの学習対象とすれば、とても価値を持つものになると思う。


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