西洋神秘伝統の歴史(古代〜紀元前4)

釈迦の教え

釈迦立像(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Gandhara_Buddha_(tnm).jpegより)

紀元前数世紀の頃には、現在でも有名な哲学者として知られているもの達が多く登場する。特に注目すべき人物として、西洋の人物ではないが、ここでBC6〜4世紀のインド大陸に生まれ仏教を興した、かの有名なゴータマ・シッダルダ(釈迦、又は仏陀とも呼ばれる)を挙げておこう。彼については、神格化により様々な伝説が覆っており、その真の人となりを知るのは苦労するが、彼の説いた四諦、八正道、十二縁起などは、とても高度な哲学として知られる。元々、彼の教えは全てのものに対しての正しい見方を説き、あらゆる苦からの解脱を目的とするものであった。今日ではこれを原始仏教とする。その後、一切の衆生を救済せんとする教えが加えられ、大乗仏教としての仏教が興る。

これらの教えは様々な解釈の変遷や土地を経て538年頃に日本にも伝わり、日本文化にとても大きな影響を与える事となった。そして、800年頃に三密などの実践的な秘密の修行体系を持った教えである密教が、空海によって日本に伝えられ、日本密教として花開くこととなる。この密教という体系は日本の学徒にとっては、とても大きな意味を持つものである。

古代ギリシャの哲学者達(ピタゴラス、ソクラテス、プラトン)

ピタゴラス(中世の図像より)

この時代は西洋でも、特にギリシャを中心として、高名な哲学者を多く生み出す事となる。紀元前6世紀に生まれたピタゴラスは現在、一般には数学の定理などで名を知られる存在であろう。しかし、彼は神秘伝統を深く研究・実践するものでもあった。彼は若い頃から世界各国を旅して周り、エジプトをはじめ、様々な土地の密儀の伝授を受けたとされる。長じて、彼は教団(ピタゴラス教団)を作り、弟子達と共に数学や音楽、哲学の研究を深く行った。彼の秘教的理論の中心となる考えは、全てのものは、階層などの数学的調和によって成り立っているというものである。この考え方の下に、ピタゴラス達は音楽と呪文などにより、様々な不思議な行為を行ったという伝説が残っている。

また、紀元前469年頃生まれたソクラテスも哲学者として名高い。彼は、アポロンの神託において、彼以上の哲学者はいないとまでいわしめた。その「無知の知」の思想による「疑い、議論する」事への考え方は、後の哲学者達に多大なる影響をもたらす。彼はまた、常に「ダイモン(神霊)」と呼ばれる存在から、様々なメッセージをも受け取っていたという。この存在は、一種の指導霊ともいえるものであるが、そのダイモンよりの導きも彼に至高の智恵を与える一助になったとされるだろう。

そして、彼の門下生であった紀元前427年生まれのプラトンは、ピタゴラス派との交流により、感覚を越えた真の存在「イデア」を元にした論を打ち出す事になる。彼はまた「知」を研究する学園「アカデミア」を設立。後の西洋哲学、そして西洋神秘伝統に多大な影響を与える事となった。そして、プラトンの弟子であるアリストテレス(紀元前384年生まれ)は「万学の祖」とも呼ばれ、彼もまた師に劣らず、後の様々な人間の「知」の発展に大きな影響を与えた。

アレクサンダー大王の遠征とヘレニズム文化

アレクサンダー大王(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:BattleofIssus333BC-mosaic-detail1.jpgより)

紀元前356年には、英雄として名高いアレクサンドロス3世(一般にアレクサンダー大王、イスカンダルとも呼ばれる)が生まれる。彼はギリシアとペルシアの中間にあるマケドニアの王の子として生まれ、先に紹介したアリストテレスにも教えを受け成人する。兵を挙げた彼は、破竹の勢いで、その当時の各国の軍隊を打ち破り、エジプトからペルシア、インドの一部までも手中にし、一大帝国を築き上げることとなる。彼のこの東方遠征によって、ギリシアの文化と古代オリエント各地の文化が混じりあい、ヘレニズムの文化を生み出したとされる。

このヘレニズム文化は、ヨーロッパ文明の源流となる2つのうちの一つとされ、もう一つはヘブライズムとされている。又、アレクサンダーがエジプトの支配の中枢都市としたアレクサンドリアには、一大図書館が築かれる事となる。そこには、各地から様々な知の文献が集められ、古代の最大、最高の図書館、アレクサンドリア大図書館と呼ばれる事となった。


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