秘教的サイン集

解説

我々の物質的身体はそれ自体が、神聖なる力のこの物質世界への発現である。明確な意志と想像力を持って、その体を動かし何らかの形を為す時、それは体を形作る意識の深いところから、その形に沿った力をこの世界へと流しだす事へと通ずるのだ。西欧秘教伝統では、この技法を秘教的サインと呼ぶ。

この考えは西欧秘教伝統に限らず、世界各地の様々な秘儀伝統に共通して見られる。もしより研究を深めたい学徒は、日本であれば密教の印、またはヨガのムドラー等などにもその参考的知識を得ることが出来るだろう。

このページでは特に黄金の夜明け団/クロウリー系統の儀式において使用される秘教的サインを紹介していく。

各秘教的サイン紹介

ホルスのサイン

ホルスのサイン、あるいは入場者のサインとも呼ばれる。まず両手両足を揃えてたつ。頭上にケテルの光輝を観じ、左足を一歩前へ出し、両手をケテルに触れる。次に両手を手のひらを下にして前に出し、頭を屈め、両手の間から前方を見る。両手から光輝が前方に向かって注がれるのを観ずること。このサインは今まさに飛びたたんとする、天空の神ホルスを模したものである。

ハーポクラテスのサイン

ハーポクラテスのサイン、あるいは沈黙のサインとも呼ばれる。基本的な実施法としては、まずホルスのサインを行い、そこから引き続き、左足を戻し両足を揃え、左足で一度足踏みをする。左手の人差し指を下唇にあて、右手は下に下げる事でこのサインと成す。右手の人差指を下唇にあてる流派もある。また、ホルスのサインを行わずに、このサインだけを行うこともある。人差し指を唇に当てているときは、自らを水蒸気に包まれ聳え立つハーポクラテス神と観ずる事。ホルスのサインは主に意志の放射に使われ、ハーポクラテスのサインは防御に使われるものである。

螺旋光のサイン

このサインはHOGDのキケロ夫妻がその書籍で紹介しているものである。心臓の前で両手を伏せて東を向き、目の前の空間に東の方角と頭上から白い光が集まるのを観ずる。光が満ちたとき、眼前でその光が三角形を形作るのを想像する。その白い光の三角形は出来上がるとしばらく白と虹色に脈打つ。その輝きが十分強くなったら、右手を剣印を作って前に出し、左手を心臓の前に置く。右手で時計回りに螺旋を描いてゆっくり光を左手に導く。左手に右手が来たら両手を組み合わせ、心臓の上に手を置き手のひらを外に向ける。このサインは光の引き寄せに使う。

ジェレーター(地)のサイン

地を象徴する1=10位階のサインである。右手を手のひらを前に出して高く掲げ、左手は手のひらを後ろにして下へ下げる。右足を一歩前へ出す。

セオリカス(風)のサイン

風を象徴する2=9位階のサインである。両腕を肩の高さで上に曲げ、手のひらを重いものを持つようにする。

プラクティカス(水)のサイン

水を象徴する3=8位階のサインである。両手の人差し指と親指を当て逆三角を作り、胸の前にあてる。両腕は肩の高さに保つ。

フィロソファス(火)のサイン

火を象徴する4=7位階のサインである。両手の人差し指と親指を当て三角を作り、頭の前にあてる。

迎え入れるイシスのサイン

両腕を挙げ、手のひらを下にして、肘のところでやや曲げる。

凱旋するパンのサイン

両手でピースサインを作り、両腕をV字状にあげる。このサインは達成を意味し、術において目的が達せられた事を象徴して行う。

充足のサイン

両腕を挙げ、手のひらを合わせる。

ヴェールを開くサイン

まず両手の甲をあてた状態で前に突き出す。次にカーテンを開くような感じでその両手を左右に開き、そのまま手を下に下ろす。ポータルのヴェールを開いて進む意味を示すサインである。

ヴェールを閉じるサイン

カーテンを左右から掴むような感じで、両手のひらを肩の位置で左右に広げて前に向ける。次にカーテンを閉めるような感じで、その両手を閉じ、最後に両手のひらを合わせて、そのまま下に下ろす。上のヴェールを開くサインで開いたヴェールを、このサインで閉じることを示すサインである。

殺されしオシリスのサイン

両足を揃え、両腕を横に広げ、全身で十字架を形作る。文字通り十字架にかけられて殺されるオシリスを模すサインである。また、イエスの磔刑の意味も含む。

嘆きのイシスのサイン

右腕を上に挙げ、左手を肩の高さで横に伸ばし、Lの字を形作る。頭を少し左に傾げる。流派によっては、左手を子供を抱くような形にする。LVXのLにあたる。

アポフィスとテュフォンのサイン

両腕をV字上に挙げる。天を仰ぐ。LVXのVにあたる。

甦りしオシリスのサイン

両腕を胸の前でクロスし、X字を形作る。頭を垂れる。これは、LVXのXにあたる。LVXサインは連続して行い腕を円を描くように動かす。その螺旋の力により、天空から光を引き降ろす。この「螺旋の力」は単純な事ながらも魔術における、力の操作のとても重要な要点である。また、殺されしオシリスのサインから蘇るオシリスまでの一連のサインは、闇に殺されし光が再び復活する事を意味する。この光の復活は、様々な秘儀に共通して見られるテーマであり、これらLVXサインは基本的にエジプト神話を元にしているが、また同時にキリスト教におけるキリストの復活も意味しているのである。


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