小五芒星儀式

式次第

・カバラ十字を行う
・東に向き、地の五芒星を、東の空中に描く。中心を指し、「YHVH」(ヨド・ヘー・ヴァウ・ヘー)と唱える。
・南に向き、地の五芒星を、南の空中に描く。中心を指し、「ADNI」(アードーナーイー)と唱える。
・西に向き、地の五芒星を、西の空中に描く。中心を指し、「AHIH」(エーヘーイーエー)と唱える。
・北に向き、地の五芒星を、北の空中に描く。中心を指し、「AGLA」(アーグラー)と唱える。
・東に向く。腕を広げ唱える。「我が前にラファエル。我が後ろにガブリエル。我が右手にミカエル。我が左手にアウリエル。我が回りに五芒星燃え上がり、我が頭上に六芒星輝きたり」
・再度、カバラ十字。

注1)地の五芒星の描写法は至高五芒星儀式の項目を参照。目的により、召喚と退去を使い分けること。

解説

入門者への解説

・これは、現在GD系統の西欧神秘伝統の実践学習を志すものが、QC(カバラ十字)と共に、その実践学習の最初に行うことになる儀式といえよう。よく入門者は、「儀式」の実践を行なうとなると、それだけで何らかの不思議な体験を得れるものと憧れやすいが、これは数回行なったからといって、不思議な事はまったく起こらない。その代わり、この儀式を何百回と行なったときに、学徒はこの儀式の本当の価値を理解することが出来るであろう。以前、私の下に教育を求めてきた方の中には、この儀式を行うと、どんな不思議な事が起こるのですか?の様な質問をされた方もいたので、まず初めにその点の勘違いをしないように、ここに記しておく。

・この儀式を行なうに当たっては、一人きりになれる部屋を用意する事。広さは出来るだけ広い方が良いが、4畳半もあれば、十分儀式を行なえる。部屋が狭いときは円を描かずに、部屋の中央で自分の向きを変えるだけでも良い。儀式の最中は、神名や言葉を唱えるので、なるべく声が外に漏れない部屋で行なえると良いだろう。基本的に神名を唱えるときは声を朗々と大きく唱える方が良いのだが、ただ、日本の一般的な家庭環境だと、すぐ隣の部屋に家族がいたりする事も多いので、そういう場合は儀式において声を大きく出来ない事はやむを得ないことである。

儀式を行なう部屋はちゃんと片付けておくこと。部屋の扉は鍵を閉め、窓はカーテンをかけるなどして、中で何をやってるのか見えない様にしておく事。あとで家族の人たちに変な目で見られたり、近所の人たちに変な噂をたてられても良いのなら、話は別だが。

・まだ実践学習を学び始めたばかりの学徒は、この儀式を行なうにあたって、特に最初から道具を用意する事は無い。変に道具を用意してから行なおうと思って、実際の学習を先送りにするよりも、何も道具を用意しなくて良いから、実践を何回もより多く行なう方がよほど学習の進みは早い。五芒星を描くときは右手を剣印の形にして、それで描くだけでよい。後になり、学徒の学習が深まってくれば、儀式用の短剣や、法衣、祭壇、香などを適宜、儀式に付け加えていく事になる。

・実際に儀式を行なうときの簡単な方法をここに記しておく。まず部屋をかたずけ、出入り口を締め切り、一人きりになる。四拍呼吸やリラックス法を行ない、精神を落ち着ける。部屋の中央にたち、QCを行なう。東に進み、五芒星を自分の前面に描くこと。次に五芒星の中央を指し、神名を唱える。部屋を円を描くように南へ行き、南を向き五芒星を描き中心を指し、神名を唱える。以降、同じように北まで行い、東に戻ったら、また、部屋の中央に戻る。そこで、両腕を十字の形に広げ、「我が前に・・」を唱える。その後、QCを行い、儀式を終える。

実践詳細

・描く五芒星の大きさは、自分の額の上から両脚の付け根くらいの大きさになる。描き方としては召喚の場合はまず、自分の額の上くらいに腕をいっぱいに伸ばして描きはじめ、腕を伸ばしたまま自分の左腿の付け根の前くらいまで下ろし、それから自分の右肩の前の少し右側まで上げ、そのまま水平に左肩の少し左側の前まで手を持っていき、右腿の付け根くらいまで手を持っていき、最初の描きはじめたポイントに戻る。退去の場合は、それを左足の付け根から始める。

・五芒星を描く時は、基本的にその指もしくは儀式用の短剣の軌跡に青白い光、または炎が残って光輝くのをイメージする事。そして、五芒星を描き終った後、中心を指したときに、その光がより一層強まるのをイメージする事。

・各方位の五芒星を描く時に、その方位の四大に対応したイメージを喚起する方法がある。例えば、東の五芒星を描いた後には、その方向から乾燥した心地よい風が吹いてくることをイメージする。南では、熱気が、西からは冷たい、北からは乾いた風が吹いてくるのをイメージする。また、東では風が踊るのを、南では炎が燃え盛るのを、西では水のせせらぎを、北では豊かに実る大地のイメージを用いるなど。

・基本的にこの儀式を行なうときはまず最初に、カバラ十字を行なう。その後、東に進み、東の五芒星を描く。その後、南に円を描くように歩き、南面して南の五芒星を描く。同じように円を描くように西、北、東と進み、東に戻ったら、部屋の中央に戻り、腕を広げ「我が前に・・」を唱える。
・部屋が狭く、円を描くように進めない場合は、部屋の中央で自分の向きを変えるだけでもよい。
・全ての方角で「地」の五芒星を使うのは、我々はいつもその儀式の場を大地の上にて行なうため、地の五芒星で代用できるからである。

概略説明

・小五芒星儀式はカバラ十字と並んで、西欧神秘伝統の実践学習でとてもよく用いられる儀式である。西欧神秘伝統では流派により、この儀式を元にした様々なオリジナルの儀式も作られている。スター・ルビーやグノースティック五芒星、エノク五芒星の儀式などが代表的だ。これだけ、様々な儀式が作られるのは、この儀式には、更に進んだ段階の儀式を行なうための様々な重要な要素が凝縮されているからである。西欧神秘伝統の実践学習を志す学徒は、その学習を行なうにあたって、この小五芒星儀式を出来るだけ頻繁に回数を行なって欲しい。

・この儀式は五芒星の描き方により、2通りの効果を持つ。召喚の五芒星を用いるときは、円を作り、その中に意識や様々な存在の力を呼び満たすため。退去の五芒星を用いることは、その場にある様々な諸力を退去させ、純粋な力に満たされた円を作るために用いられる。召喚の小五芒星儀式は、小五芒星召喚儀式(Lesser Invocation Ritual of the Pentagram略してLIRP)と呼ばれ、退去の小五芒星儀式は、小五芒星退去儀式(Lesser Banishing Ritual of the Pentagram略してLBRP)と呼ばれる。そして、両者を特に区別しない呼び方としては小五芒星退去儀式(Lesser Ritual of the Pentagram略してLRP)とする。

・よく初心者が誤解する事に、この儀式を一回行なっただけで何か凄い効果が得られてしまうのでは?とか、何かとんでも無いことが起こるのでは?と思ってしまう事がある。まず、その様な誤解を避けるために書いておくと、この儀式においてはそんな事はまったく考えなくて良い。西欧神秘伝統で行なわれる儀式の効果の解釈には2通りある。何らかの決まったパターンの所作を行なうことにより、それが集合無意識などの世界に眠っていたそのパタ−ンに合う力に働きかけ、ある程度早く効果を現実世界にもたらすという解釈。もう一つは、そのパターン自体は本来、何の意味も無いものだが、何回も長く続けて行なっていくうちに、その力が自らのオーラや集合無意識にまで刻みこまれ、効果を現実界にもたらすというもの。

西欧神秘伝統の儀式においては、この2つの要素のどちらかが大きくなったり小さくなったりするものだが、このLBRPという儀式では、後者の割合の方が大きい。てっとりばやく言えば、初心者はこの儀式をその通りに行なっても、その状態では高い効果は得られないという事なのだ。もちろん、行なえばそれなりの結果はあるが、それでもよく初心者が誤解するような、急激に世界が変わってしまうというような効果は無いに等しい。それゆえ、学徒はこの儀式を何回も頻繁に行なっていくこと。この儀式に慣れ親しんでいくうちに学徒は、この儀式の本当の効果に気づくようになるだろう。

・普通に考えると、この儀式は召喚と退去は対になって用いられると思われるものだが、実践的には、退去の儀式のみで用いられる事も多い。退去儀式はそれのみで、他の様々な儀式を行なうに当たっての場の清浄化に使えるからだ。

・一番上に書いた儀式方法は、この儀式の本当に骨組みだけである。学徒はこの骨組みに様々な要素を付けたして、学徒自身のオリジナルな小五芒星儀式を組み立てて欲しい。例えば、五芒星を描く時にその方角に対応する四大の色で五芒星を燃え上がらせたり、神名を唱えるときに、その五芒星の中心にヘブライ文字の神名を視覚化したり、五芒星の向こうに四大に属するイメージを視覚化し、それを自らの感覚で体感したり、基本属性を考慮した自分オリジナルの大天使を描き、それをイメージ化したり。こういった、自らの資質に合ったイメージを用いた小五芒星儀式を長い間頻繁に行なっていく事は学徒自身のオーラに安定した四大の力を築くことになり、その効力は計り知れないものとなる。

資料類

・大天使の基本的なイメージは次の通り。ラファエル。RAPHAEL。「神の癒し手」の意味の名を持つ。聡明そうな細身の存在。エルフのような面立ちと耳を持ち、金髪を風になびかせる。ラファエルと相対すると、清清しく頭の冴え渡るような感じが湧く。ミカエル。MICHAEL。「神の様に在りしもの」の意味の名を持つ。大きな剣を携え、鎧に身を固め峻厳な顔つきをした屈強な存在。ミカエルと相対すると、体が熱く燃え上がるような意志が心の奥に湧く。

ガブリエル。GABRIEL。「神の強さ」の名を持つ。柔和な顔つきで長髪を背中にたらし、物静かそうだがその奥に強い意志を秘めた細身の存在。ガブリエルと相対すると、静かな中にもとても優しく、全てを慈しむような感情が湧く。アウリエル。AURIEL。「神の光」の意味の名を持つ。溢れるような明るさを秘め、男性イメージの場合は大柄な体、女性イメージの場合は豊かな体つきを持った存在。

・大天使のイメージについては、西欧神秘伝統の流派や結社によって様々な細かいイメージが決められている。よく初心者は、どれかが正しく、他のものは全て誤りであると決め付けてしまう事があるが、本来、こういった存在のイメージについては、ある大まかな根本的な約束さえ守れば、各自、自由にイメージを作り出して良い。この根本的な事とは、例えば、ラファエルであれば細身の知的そうな存在、ミカエルは強き存在、といった感じのものである。

ミカエルを弱々しいものにしたり、ガブリエルを好戦的なイメージにはしない方が無難である。また、大天使といった「善」とされるような存在に、一般的に「悪」とされるイメージを付け加えるのも避けたほうがよい。他に天使のイメージを作る時に考えてしまう事に、天使の性別がある。これについては本来、天使は霊的存在であり、性別を持たないので外見的には学徒の自由に決めても良い。四大天使を全て男性、または女性のイメージで纏める事も可能である。ただ、基本的には属性的にラファエル、ミカエルは男性、ガブリエル、アウリエルは女性のイメージにされる事が多い。

・下に有名な大天使達の図像を載せておく。イメージ作りの参考にしてほしい。


ラファエル(ヴェロッキオの弟子画)

ミカエル(ラファエッロ画)

ガブリエル(ヒューベルト&ヤン・ファン・エイク画)

アウリエル(メロッツォ・ダ・フォッリ画)

・四大、各方位に対応する事柄を下に纏めておく。オリジナルな小五芒星儀式つくりの参考にして欲しい。

方角 四大 属性 情景
能動 緑の草原
能動 太陽が照らす平原
西 受動 大きな湖あるいは海
黒(あるいは緑) 受動 緑なす大地

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