タロットについて2<IMN魔術基礎知識19>

タロットカードの歴史

こちらでは、基礎知識02で少し触れた「タロットカード」について更に説明しておこう。タロット・カード(Tarot Card)は現在、占いに用いられるものとして、一般的にもよく知られるようになっている。しかし、西洋の秘教伝統では、このタロットは占いに用いられるだけのものではなく、実は秘教伝統の深遠なる秘儀をその「絵」で万人に語るものとして、とても重要視されるものなのだ。

発祥

現在、多くの人が知っているタロットカードであるが、その発祥については、いまだ確実視される説は無い。秘教的な伝説では、タロットのルーツは古代に消え去った超文明アトランティスの秘儀であるという話もある。この知識はアトランティス文明が滅んでも残り、やがて古代エジプト文明に伝わる事になる。

古代エジプトの神殿には22枚の霊的秘儀を示す巨大な象徴的絵画が飾られ、神官達に深遠なる叡智を与え、古代エジプト文明の繁栄の礎になったとされるのだ。この絵画が現在のタロットの元となったという。もちろん、これらの話は伝説に過ぎないものだろうが、タロットの神秘性についての良い寓話となるであろう。

現実的に辿れる一番古いタロットの記録については15世紀半ばくらいからになる。15世紀半ばの北イタリアの貴族エステ家の帳簿には、タロットのルーツと見られる「トリオンフィのカードセット」を購入したとの記録が残っているとの事である。

また、現存する最古クラスのタロットカードとしては「ヴィスコンティ・スフォルツァ版」と呼ばれる15世紀後半頃のセット数種類が断片的ながら見つかっている。このカードセットは構成的には今のタロットに近いながらも、悪魔や塔が無かったり、今のタロットには無い札があるなど、細かいところで相違が見られる。また、この頃のタロットは画家が手書きで作ったものであり、まだあまり一般には流通していなかったと考えられている。

印刷術の発展による普及

このタロットが一般にも多く出回るようになったのは、木版の印刷術が発展し大量印刷が可能になった16世紀頃からである。その後、17世紀頃にタロットの大きな生産地となっていたフランスのマルセイユの名前を冠した「マルセイユ・タロット」という種類のカードが広く知られるようになる。

このマルセイユ・カードの時点で、現在のタロットの22枚の大アルカナと56枚の小アルカナの基本的な構成がほぼ確定されたと考えられている。

このタロットは、発祥後しばらくは主には遊戯用の札として使われていたと見られている。時には占いに用いていた事もあったみたいだが、ごく少数に留まっていたとの見方が現在の研究では主流である。

秘密の知識を隠したカード

しかし、その状況を大きく変える人物達が18世紀末のフランスに現れる。まずクール・ド・ジェブランという人物が、タロットとは古代エジプトを起源とする神秘知識を絵として説明するものであるという理論を発表。その流れを受けて、占い師エッテイラが占星術などと絡めて構成を独自に改変したタロットを作成し販売。これらの神秘的な説や用い方が人気を博し、タロットとは占いに用いるものとの解釈が定着する事となる。

その後、19世紀半ばのエリファス・レヴィという人物がタロットの大アルカナの22枚という数は、ヘブライ語の22文字に対応し、ユダヤ教のカバラの秘儀に通ずるものであるとの説を提唱。その説を受け継ぎ、さらに研究発展させたのが19世紀末にイギリスに生まれた「黄金の夜明け」団(以後、GD団と記す)である。

現在でもタロット界で名高い「ライダー版タロット」を生み出したアーサー・エドワード・ウェイトや、「トート・タロット」を生み出したアレイスター・クロウリーは、このGD団に所属し、その教義を元にタロットを作成したのだ。

IMNでのタロットの扱い

時代を経て、このタロットはその神秘的な絵柄が多くの芸術家や作家を魅了し、近代、爆発的な人気となる。現在、タロットは人によって様々なデザインのカード・セット(一纏まりのカード・セットの事をデッキとも呼ぶ)が作成され、まさに百花繚乱の如き様相を呈しているといえるだろう。ただ、そういった多数の種類があるタロットの中でも、IMNでは、GD団の教義の流れを組むデッキを学習の中心的対象として使うので学徒は認識しておいてほしい。

GD団の教義を元に作られたデッキでさえも、今では色々な種類が作成・販売されている。下記にその代表的なものを挙げておこう。

「ライダー版タロット」(A・E・ウェイト作成)
「トート・タロット」(A・クロウリー作成)
「黄金の夜明け団タロット」(ロバート・ウォン作成)
「黄金の夜明け魔術タロット」(キケロ夫妻作成)
「ヘルメティック・タロット」
「BOTAタロット」
「SOLタロット」(D・A・ノーウィッキ監修)

どれも素晴らしいデッキではあるが、学徒が学習を進めるにおいて、どれか一つを選ぶと考えると一長一短なところが出てくる。IMNでは基本的には基礎知識02でも書いたようにライダー版タロット、トート・タロット、マルセーユ・タロットの3種を購入しておくと良いとしておこう。


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