ヘブライ文字について3(三母字。七複字。十二単字)<IMN魔術基礎知識17>

宇宙創生論

多くの秘教伝統では、その伝統の性質に応じた様々な宇宙創生論を持っている。IMNの魔術理論の基本骨子を形成している「カバラ」もその一つであるといえよう。このカバラの宇宙創生論には、「イェツィラー(イェツィラーとはヘブライ語の言葉で、日本語では<形成>や<創造>などと訳される)の書」の理論が、大きな影響を与えたと言われている。この書は2から3世紀ころには成立していたともされ、その中には「主(唯一神)」が10のセフィロトと22のヘブライ文字により、この世界を構築したという秘教論が展開されているのだ。

イェツィラーの書

この「イェツィラーの書」では、まずセフィロト論についてから述べられている。この世界は10のセフィロトにより1番目に「聖霊」が造られたとされ、2、3、4番目として、22のヘブライ文字に「風(空気)」「水」「火」が造られた。そして5番目から10番目にこの世界の上下東西南北の空間が造りだされたとされているのだ。セフィロト論については、IMNでもまた別のページで紹介する予定なので、ここではその次からの、22のヘブライ文字論について少し詳しく紹介していこう。

「イェツィラーの書」では22のヘブライ文字の音と文字を、この世界のあらゆるものの「基盤」として考えている。この論を展開するために、イェツィラーの書では、22のヘブライ文字を3つの階級に分けた。

一つ目が「三母字(Three Mother Letters)」と呼ばれ、ヘブライ文字のアレフ、メム、シンがこの階級に属する。二つ目は「七複字(Seven Double Letters)」と呼ばれ、ベト、ギメル、ダレス、カフ、ペー、クォフ、レシュ、タウがこの階級に属する。そして三つ目は「十二単字(Tweleve Simple Letters)」と呼ばれ、残りのヘブライ文字がこの階級に属するものである。

この三、七、十二の分け方は、三つの元素、七惑星、十二宮といった占星術(錬金術)的象徴群の分け方に由来を持つともされ、イェツィラーの書でも22のヘブライ文字の各々を占星術的象徴に割り当てる考え方を記している。しかし、イェツィラーの書では七複字については確実な配属を記していない。その為、後世、その細かな割当は研究者によって幾つもの説が提唱され、混乱を来すことになった。

上記を踏まえてGDではヘブライ文字の占星術的象徴への割当を下記の形で用いる事にした。IMNでもその論を踏襲する事になるので、学徒も理解・記憶されたし。

ヘブライ文字 占星術的象徴 階級
アレフ 三母字
ベト 水星 七複字
ギメル 七複字
ダレス 金星 七複字
へー 白羊宮 十二単字
ヴァウ 金牛宮 十二単字
ザイン 双児宮 十二単字
ケト 巨蟹宮 十二単字
テト 獅子宮 十二単字
ヨド 処女宮 十二単字
カフ 木星 七複字
ラメド 天秤宮 十二単字
メム 三母字
ナン 天蝎宮 十二単字
サメク 人馬宮 十二単字
アイン 磨羯宮 十二単字
ペー 火星 七複字
ツァダイ 宝瓶宮 十二単字
クォフ 双魚宮 十二単字
レシュ 太陽 七複字
シン 三母字
タウ 土星(地) 七複字

三母字、七複字、十二単字の説明

三母字

三母字の名前の由来は、この三母字こそ、全ての音と文字の基盤にして「母なる」ものであるとされる事から来ている。GDでは三母字の占星術的割り当ては、イェツィラーの書に書かれているとおりに、アレフを風、メムを水、シンを火として割り当てている。この三母字のうち、シンは能動性、熱、主により天界を作り出すものなどを意味する。メムは受動性、冷、主により大地を作り出すもの。アレフは両者の間の空間、また、調停者などを意味する。

七複字

七複字は、各々の文字が2つの相反する意味を持つとされている。例えば、ベトならば「生と死」を司るとされるのだ。また、各々の文字は硬い音と柔らかい音の2つの音を持つともされ、以上の事から、これらの7つの文字は「複(Double)」字と呼ばれる。「七」の数字は古代の七惑星や、旧約聖書は創世紀に記された創造の七日間、人体の7つの穴など、様々な箇所に用いられる神聖な数字として知られる。GDでは、この七複字を上記の表に記している形で七惑星に割り当てた。この割当てはタロットとヘブライ文字の対応による。

十二単字

十二単字は十二宮、十二か月、人間の十二の器官、十二の性質、空間の各方向など、この世界の十二に分けた様々な部分や要素などを意味する。GDでは、この十二単字を上記の表に記している形で十二宮に割り当てた。

人間の意識が世界を認識する根本原理

以上のように、イェツイラーの書では、占星術的考え方と絡めて、22のヘブライ文字により、この世界の細部が形作られたとする秘教的理論を展開している。こういった「文字」「音」により「世界」が創られるとする考え方は、カバラ以外の様々な秘教伝統でも似たような考え方を見出すことが出来るだろう。「文字」「音」は、「人間」というものの意識にとって、この世界を認識する働きの根本的な原理(要素)へと繋がるのだ。


学習事項

・ヘブライ文字の三階級に配属される文字を覚える事(三母字はアメシュ(AMSh)。七複字はベガドケファルス(BGDKPhRTh)と覚えると良いだろう)
・「イェツィラーの書」については、IMNからもリンクをはらせて
いただいているStarry Abode邦訳が読めるので、そちらも参照してほしい。


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