惑星とアーキタイプ(元型)<IMN魔術基礎知識010>
古代の七惑星と神のイメージ
天空に輝く星々は常に人々の興味の対象であった。ある程度、文明が発達すると、天空に無数に存在する星のうち、ある少数の星はその天空で示す動きが、時には他の星よりも早くなり、時には遅くなり、そして逆行したりするなど、他の星達に比べて、特に変化ある動きをする事が知られてくる。
その、変化ある動きをする星たちは惑星(惑う星)として水星・金星・火星・木星・土星の5つが認識された。また、昼を照らす太陽、夜を照らす月の2つは、その輝きから他の星達と別個の存在とも考えられたが、それら特に重視された、七つの星達を纏めて合わせたものを、西洋神秘伝統では「古代の七惑星」として呼ぶ事にしている。
その変化ある動きから、古代の七惑星達は特に意味を持つ星として重視され、様々な土地で神話の神のイメージと結び付けられて考えられた。その中でも世界で特に有名なギリシア・ローマ神話では、惑星の輝きと動き方から次のように惑星が神々と結びつくことになる。
太陽は、その神々しい輝きから、若く美しい姿を持つ永遠の美青年アポロンと。水星はその素早くせわしない動きから伝令と知識の神マーキュリーと。金星は女性のように満ち欠けを行い、太陽が輝いている時でもその姿を表すところから、力に満ちた永遠の美と愛の女神ヴィーナス。火星はその赤き色と数年ごとに強い輝きを示すところから戦争の神マルス。木星はその雄大な動きから、神々の中の主ジュピター(ユピテル)と。土星は緩慢な動きから、時をつかさどる神サトゥルヌス。月はその神秘的な美しさから女神ディアナと結びつくことになったのである。
科学的な惑星の見方
長い間、惑星は7つ(純粋には5つ)しかないと思われてきたが、最近になって天体を観測するための機器がとても発達、その事により土星より外の惑星も発見されてくることになる。それらには、太陽に近い順に天王星、海王星、冥王星が、ある。(海王星と冥王星は一定周期ごとに、その近さの順が入れ替わる。最近では99年2月12日に冥王星が最遠の惑星に復帰した)。
それらの惑星も占星術師によってまたギリシア・ローマ神話の神々と結びつきをもたらされた。天王星は、天空の王ウラノス。海王星は海の王ネプチューン。冥王星は冥界の王プルートーである。
これらの惑星達は、科学的にはチリやガスから成り立った物質の固まりで、それが我々の精神に直接影響を与えているとは、現在の科学では否定されることが多いものである。
アーキ・タイプ
しかし、最近になって心理学の研究が進むに連れ、惑星達の持つ、それぞれの神の「イメージ」に代表される、ある種の「力」が人間の集団無意識の底から、人間をいろんな形でつき動かしているという事が、言われるようになってきたのだ。
そのイメージの力を心理学用語で「アーキ・タイプ(元型)」と呼ぶ。この元型はそれぞれの惑星によってのイメージの対応があり、そのイメージの力に沿った影響力を人々に行使するとされるのだ。
例をあげると、まず太陽は、人間の心の内に潜む意識の中心「自己」を表現するとする。それゆえ、人間は日中は活発に活動し、夜になると眠りにつくのだ。月はその夜に代表される無意識的な面を示す。水星はその素早さから物事を引っ掻き回す「トリックスター」と呼ばれる元型。金星はヴィーナスに代表される「アニマ」と呼ばれる意識の中の女性的な力。火星は「アニムス」と呼ばれる男性的な力の中の英雄性。木星は「アニムス」の人を支配・導く寛大な王としての力。土星は「グレートマザー」と呼ばれる、時と共にものを刈り取るアニマの大女神的な力と対応する。
これらの「力」は普段から人々の意識の奥底で、生物の様に動き回り、その動きに気付いていない人々の生活、そして人間の歴史を形作る事にまでも影響していってるのだ。
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