リラックス法<IMN的魔術実践基本学習>

リラックス法とは

リラックス法とは四拍呼吸と並んで、実践学習の重要な基本要素である。人間にとって意識と身体は不可分な関係にある。緊張は人間を含む動物にとって、動作を行ったり何か危急な事があった場合に備えるための必要な対処法なのであるが、緊張自体は人間の心身の血の流れを悪くし、また、意識に人間の身体の内的感覚を伝えにくくしてしまう。

そして、そういった緊張が不必要に続いたり、環境的に緊張を常にさせられる状態に置かれると、緊張が慢性的なものとなってしまい、いざ、実践学習をやる時に、とても大事な心身の内的感覚が解らなくなってしまう。そのため、リラックス法は最初はそういった緊張によってわかりにくくなってしまった内的感覚を呼び戻すため、もう一つは実践学習中に不必要な緊張を起こさず、秘力の流れをスムースにするために行われる。

リラックス法の実践

緊張と弛緩。能動弛緩・受動弛緩

リラックス法の最初はまず、手を強く握る事から始めてみてほしい。ただし、指が食い込むほどの無理な緊張は行わなくていい。これは、緊張と弛緩の感覚をつかむのが目的だから、ある程度、力を入れるだけで良い。手を力を入れて握ったら、手や腕の筋肉の緊張を感じること。そして、その緊張をよく感じたらそれをパッとゆるめてみること。手や腕の周りの筋肉の緊張が解かれていくのが感じられると思う。

それが感じられたら、弛緩が終わってもさらにその部位に緊張が解かれていく感じを再現してみてほしい。自分の意志でさらに筋肉が弛緩していく感じが得られるのがわかるだろう。このうち、前者のように緊張が解かれたため自動的に筋肉が弛緩していくのを受動弛緩。後者のように自分自身の意志で弛緩の感じを出していくのを能動弛緩という。この実践学習で大事なのは、能動弛緩の方である。その感覚を十分記憶しておくこと。

次に、床に仰向けに大の字に寝転がってほしい。その状態から、頭だけを持ち上げて足先の方を見ること。肩や首の辺の筋肉、そして背中の筋肉が広範囲に渡って緊張するのがよく分かるだろう。ある程度、その姿勢を維持したら、頭を元に戻す。その際に、身体の広範囲に渡って行われた緊張の感じがほどかれていく感じをよく覚えておくこと。

全身のリラックス法

先の練習を終え、緊張と弛緩の感じを理解したら、次に身体を各部分に細かく分けて緊張と弛緩を行っていき、身体の感覚を掴んでいくことになる。まずは右と左の腕から行っていってほしい。一番最初に行ったように手を強く握ってそれを弛緩させること。手の周りと下腕部の筋肉の緊張と弛緩をゆっくり感じてほしい。

弛緩の感覚がわかったら、それを能動弛緩で再現すること。繰り返すが、この、筋肉が弛緩していく感じをよく感じ、その感じを能動弛緩で再現できるようになることがとても重要なので、その点はよく気をつけて感じてほしい。ある程度、感覚が磨かれてくると、緊張の後の弛緩に際して、その部位の奥の血管の血の流れやそれ以外の微妙な流れを感じることが出来るだろう。

次に、腕の手首あたりを反対の手で持って、そちらへ向けて腕に力を入れる事。上腕部と下腕部の緊張をよく感じてほしい。これを両腕に対して行ったら、次は両手を胸の前で祈るような格好で合わせて、両手のひらに力を入れて押す。胸の筋肉や腕の緊張と弛緩をよく感じること。次に両手の指を曲げて胸の前で合わせて、お互いに引っ張る。胸と上腕部の裏側の緊張と弛緩をよく感じること。

次に首を左右前後にある程度力を入れて曲げて緊張と弛緩を行う。その際は頭を手でもって、その方向に力を入れるのが行ないやすいだろう。ただし、首の緊張を行うときはよく注意が必要である。あまり力を入れすぎると首の周りの神経に異常を生じる場合があるので、無理な力を入れないこと。また、、背骨や首の周りの神経に異常がある人は、緊張を行わないこと。

次に顎をあけたり奥歯を噛んだりして、顎の周りの筋肉の緊張と弛緩を味わう。次に顔の各部位に力をいれて味わう。次に頭の皮膚に手を当てて、頭の皮膚の感覚をつかむこと。この際に注意することを挙げておく。人間には自分の意識で楽に動かせる部位と、なかなか動かしにくい部位、全然動かせない部位がある。最初の部位の代表が腕や足の筋肉であり、次がここで挙げている頭の皮膚や耳など。そして、最後が心臓などが挙げられる。頭の皮膚には本来筋肉が無いので、他の部位を動かして、その部位の感覚を掴むことになる。また、手をあて、そこに意識を集中するなどして、その感覚をよくつかむこと。次に、床の上にあぐらをかいて座り、背筋をピンと立てて、体を右側にねじる事。その際は、背骨が曲がる感覚や、その各部位の感覚。背中の緊張などをよく感じること。

注意点

また、この時に注意することとして、背骨やそれに沿って走っている神経に異常や損傷がある人は、十分注意するか、この方法を行う前に医者に相談してほしい。学徒は、こういった文書に書かれているからといって、それを安易に考えてすぐに試してみることを避けてほしい。この文書に書かれてる方法はあくまでも一般的な健康な人を対象にしているものである。自分の心身に異常があることを自覚している人は、まず医者などに相談してから、この方法を試していくなどの慎重さを持ってほしい。また、一般的な健康な人でも、これらの方法を行っていくときに、少しでも異常を感じたら、それ以上、無理をせず、しばらくは様子を見て、もし異常が続くようならば、医者にかかるなどしてほしい。

残りのリラックス法

左右どちらとも体のねじりを感じたら、次に背中を後ろに曲げて、胴体の各部位の筋肉の緊張を感じる。次に下腹に力を入れ緊張と弛緩を感じる。そして脚へ移る。まずは両足の指を曲げ力を入れ緊張と弛緩を行う。次に脚を曲げたり伸ばしたりして脚の各部位の筋肉の感覚を掴んでほしい。こうして、体の各部位の感覚を掴んだら、次に腕なら腕全体、脚なら脚全体などのまとまった範囲にたいして緊張と弛緩、能動弛緩を行い、速やかにリラックスを行う方法を練習する。

最終的に身体の各部位の緊張と弛緩の感じを掴む事。現代の人間は、こういった身体に関する感覚を忘れてしまってる事が多い。この段階のリラックスの練習を行なうのは、人間が自分自身を構成している物質的肉体の再認識を行なうことにも繋がるのだ。

IMN的魔術基本実践学習におけるリラックス法の考え方

こうした練習が一体、なぜ西欧神秘伝統の学習になるのか?と疑問に思う学徒もよくいる。たしかにリラックス法や呼吸法自体は何ら不思議なものではない、よく一般の社会でも行われている一種の身体のトレーニング法である。この分野の実践学習に不思議な方法や、超越的な学習法を期待して入ったものにとっては、かなり、これらは落胆をもたらすものかもしれない。

しかし、この分野の実際の実践学習は先の段階に進むに連れて、自分自身の心身の感覚が特に重視される事になる。術式を行うときの場の変化の感覚を感じたりすることや、自分自身の意識に組み上げた象徴を扱うときに、象徴による意識の力の湧きあがり方や、それが外界に流出発散していく過程の認識、精霊などの霊的存在の認識やその交流に際して自分の内的意識の変化を感じたりする事は、こういった実践学習を経て、特に敏感で細やかな心身の感覚を得てないと達成できないことである。学徒は、その点を踏まえてよく学習していってほしい。


学習事項

1 人間にとって緊張と弛緩が心身にどのような影響をもたらすかをとらえること
2 学徒は、この実践学習を少しずつでも良いので毎日続けて行っていくこと。


上位ページに戻る