「YHVH」について

この項で学習する「YHVH」とは上記のようにヘブライ文字でヨド(Y又はI)・ヘー(H)・ヴァウ(VまたはW)・ヘー(H)と綴られる言葉(単語)である(ヘブライ語は日本語や英語と違って、右から左へと文字を書いていくので注意されたし)。この言葉は少しでもキリスト教やユダヤ教、あるいは西欧の秘教に興味を持っているものならば聞いたことがあるであろう。基本的には旧約聖書に登場するユダヤ人達の「主」、「唯一神」の名前を指している言葉とされる。この四文字はギリシャに伝わってテトラグラマトン(四つの文字で出来た名前)、神聖四文字とも称された。

「YHVH」の由来

この言葉はモーセの十戒で「主の名をみだりに唱えてはならない」とされ、世界を創りたもうた「主」の、畏れ多く強大なる四文字の言葉と考えられる事になった。その為、この言葉の正しい発音方法はユダヤ教の司祭のみの秘密の知識とされるようになる。ここから後世、このYHVHを正しく発音したものは偉大なる奇跡すらも可能にするという伝説が生まれることになった。

モーセが数々の奇跡を起こしたのも、ソロモンが悪魔たちを従えたのも、数々のユダヤ教の預言者達の奇跡も、この四文字の名前の力に依るものだという。この正しい発音により奇跡を起こせるという考え方は、本STEPで学習した「真名」の考え方に通ずるものである。

このYHVHは旧約聖書には数多く記されているが、母音の指定が無いため、旧約聖書を読んだだけではその発音の方法が解らない。また、あまりにも畏れ多い事により、ユダヤ教の司祭達の間でも長い間発音される事が無かったという。結果、この言葉はついには本来の読み方の知識が失われ、誰にも解らなくなってしまった。ユダヤ教徒の間では通常、聖書に記されている、このYHVHの箇所をADONAI(アドナイ)と読み替えていたことから、近代に至るまでは、このADONAIの母音をYHVHにあてて、YHVHの読み方は「Jehova(イェホヴァ)」だと考えてきた。しかし現在は研究が進み、本来の読み方は「ヤハウェ」あるいは「ヤーウェ」だったとする説が有力視されるようになっている。

「主」の秘儀

このYHVHは、カバラでは神聖なる「主」の秘儀を示すものとされている。カバラに多大な影響を受けた西欧の秘教伝統においても、この四文字はこの世界を構成する様々な秘教的理論を展開する重要な術式とされたのだ。例えば、この世界の創造を四つの界に分けて論じる四界論ではY(ヨド)が源始のアツィルト界に対応し、最初のH(ヘー)は創造のブリアー界、V(ヴァウ)は形成のイェツィラー界、最後のH(ヘー)が現実のアッシャー界に対応する事になる。また、YHVHは先に学習した四大の分類にも対応する。Yは火、最初のHは水、Vは風、最後のHは地に対応するのだ。そして、この世界を形成する2つの相反するエネルギーとして、YとVを能動性、2つのHを受動性に対応するものとして捉える考え方もある。

西欧秘教伝統ではこの「YHVH」という言葉は、様々な秘教的理論を展開する術式として重要視されている。当教育コースでも、後にその理論や様々な形で実践へと繋げる方法を学習していくことになるので、学徒も認識しておいてほしい。


□学徒は上記を理解・記憶すること。


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