生命の樹について5

創造のエネルギーは深淵を超え<ケセド>を生ずる。ここから、イェソドまでのセフィロトは「セフィロト・ハ・ビニヤーン」と呼ばれる。至高の三角形が、神が創造を「意図した段階」であるならば、倫理的三角形以後は、神が実際に物質的世界を「作っていく段階」であると言えるのだ。

また、至高の三角形は「大宇宙」を意味するが、大いなる深淵から下のセフィラは「小宇宙」を意味するとされている。大宇宙は果てしない世界であるが、小宇宙はより限定され物質的世界を形作るものであるといえるだろう。

ケセド以後の論理的、星幽的の2つの三角形は、アビスを鏡として至高の三角形が反射して出来た鏡像としても捉えることができる。倫理的三角形ならば、ケセドはコクマー、ゲブラーはビナー、そしてティファレトはケテルの反射として考えられることになるのだ。それゆえ、この反射したセフィラ同士は似た属性を持つことになる。

では、このSTEPでは、「倫理的三角形」を形成するケセド、ゲブラー、ティファレトについて説明していこう。

<ケセド>

ケセドはコクマーと同様に白柱に属する。ケセドの属する白柱は「慈悲の柱」とも呼ばれるが、この「慈悲」とはケセドの別称でもある。その為、ケセドは白柱の意味を最も現すセフィラーであると言えよう。先にも述べたように白柱に属するセフィラはいずれも男性的な力を有するとされ、また、逆に黒柱に属するセフィラは女性的な力を有するとされる。しかし、これも先にも記したが学徒は、この「男性」「女性」を人間的な意味に限定して捉えてしまわないように気を付けてほしい。ここでいう「男性」「女性」は創造のエネルギーが、どんな変化をするかを人間の「性」の仕組みに見立てて説明しているものなのである。

ケセドに照応する惑星は木星である。木星はギリシャ神話にて至高神ゼウスに対応する惑星とされた。その性質にも象徴されるように、ケセドはビナーから流出してきた創造的エネルギーに、物質的段階として顕現するための、法則による「構成」の力を与えるものである。また、ケセドは、その照応する色彩、青に象徴されるように物質的世界の大海、大空の如き広く「拡大」する力のセフィラでもある。深淵を降りきたりた創造のエネルギーは、ケセドにおいて物質的顕現に向けて「構成」と「拡大」の原理を付与されるのだ。

ケセドの幾何学的イメージは「正四面体」。ケセドはまた、「建設者」の称号を持ち、ここに至って創造的エネルギーはようやく3次元の形の構築を始める。

<ゲブラー>

ケセドは次のセフィラ−<ゲブラー>を流出させる。<ゲブラー>はビナーの反射として黒柱に属する。女性的な力のセフィラであり「峻厳」の別名を持っている。この「峻厳」は黒柱の称号ともなっている。その為、ゲブラーは黒柱の意味を最も現すセフィラーであると言えよう。

先にも記したように、セフィラは生命の樹上の相対する位置にあるセフィラとペアにして考えないと理解できない。ケセドが創造のエネルギーに「構成」「拡大」する原理を付与するならば、ゲブラーは、そのエネルギーに「分解」「縮小」する原理を付与するセフィラーであるのだ。また、ケセドとゲブラーを生命活動に例えると、ケセドは同化作用、ゲブラーは異化作用ということが出来るであろう。ケセドは生命体に必要な物質を取り込み同化、あるいは組み立て拡大させる力、ゲブラーは物質を小さな構成部品に分解する異化作用なのである。

ゲブラーの基本的色彩は「赤」であり、照応する天体は「火星」、そして別称は「破壊者」と呼ばれる。いずれも流血、戦いからの破壊へと繋がるものである。「破壊」と聞くと一般的には悪い事柄と思われやすいが、しかし、学徒はよく覚えておいて欲しい。破壊とは、創造と対になるものであり、生命の樹における全てのセフィラは元来、神聖なものなのである。

<ティファレト>

ゲブラーは次のセフィラ−<ティファレト>を生み出す。ここに倫理的三角形は完成されることになる。倫理的三角形は至高の三角形の鏡像である事は先にも述べた。至高の三角形では、ケテルにおいて創造のエネルギーは「無」から「有」へ位相を変換され、そしてコクマーとビナーで二極の原理を付与される事になった。逆に倫理的三角形では、ケセドとゲブラーの二極の力はティファレトにおいて調和、融合し、ケテルで「無」から「有」への位相の変換を遂げたと同様に、ティファレトでより物質的世界に近づくための変換を経る事になるのだ。このセフィラは創造の霊が物質に変容・受肉を始める場所であると捉えることも出来るだろう。

ティファレトは、中央の柱の中央部に位置する。そこからも示唆されるように、このセフィラは調和と均衡の象徴である。ティファレトは惑星では「太陽」に対応する。マルクトは除くが、このセフィラは現実の太陽系のように生命の樹上で全てのセフィラ−をその周りにめぐらせる「調和」と「美」をもたらす。また、太陽に象徴されるこのセフィラは、万物に意識の<光>を与える力の源とされる。対応する色彩「黄金(黄)」に象徴されるように、この調和するセフィラ−は人間にとっての「理想」といえよう。

先にも述べたように、このセフィラはケテルの反射として変容の象徴でもある。創造的力、「神」の理念は、このセフィラにおいて変容され根源的な物質へと受肉する。そして、その力は物質世界に顕現を始める事になるのだ。


□学徒は上記を理解・記憶すること。この学習のポイントをまとめると下記になる。

・ケセド・ゲブラー・ティファレトの意味を理解する事


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