霊的存在について

ここでは、西欧神秘伝統で扱われる様々な「霊的存在」というものについて、この教育コースが対象としている現代日本人的な観点も含めた、当教育コースとしての解説をしていこう。

「霊的存在」というものについての考え方

ただ、その前にこういった話をする場合に注意しておきたい事柄について、説明しておかないといけないだろう。それは、この教育コースを学習している学徒の中には「霊」というものは、この世界には存在しないと考えている方も多いだろうという事である。そういった方にとっては、ここに書くことは馬鹿馬鹿しくて、理解しようと思えないかもしれない。

日本の現代人にとっては理解に苦しむ事がいろいろと出てくることになる。元々、このHPの作者は、今まで様々な霊的体験をしてきた。この教育コースも、その体験から得られた知識を学徒に伝えていこうとの考えもあり、作成されている為もある。

しかし、教育担当はこれらの霊的な事柄については、当教育コースを学習しているからと言って、学徒に頭から霊的存在について信用してほしいとは思っていない。ただ、霊的存在について頭から否定もするべきでも無いだろう。この辺については、西欧神秘伝統の先達であるブロディ・イネスという人物の次の言葉に、良い考え方を見つける事が出来るだろう。すなわち、「霊的存在が実在するか否かは重要な問題ではない。重要なのは、この世界がそれらが実在するかのように作用するという点にある(要約)」。

この言葉は、この教育コースを学習するものにとっては、とても意味を持つものになる。すなわち、霊は存在しないと考えている学徒でも、この教育コースを進めていくにおいては、とりあえず霊と言うものを存在すると仮定する、「仮定存在」として学習を進めて行くことにしてほしいのだ。これは、このHPが扱っているような秘教伝統の世界を学習する際には、よく理解しておいてほしい事柄である。秘教の知識について頭から否定もせず、しかし、盲信もせず、実際に自分で学習・体験・研究して、その上で真偽を見定めるといった考え方を、この教育コースを学習する学徒には、その学習に対する態度の基礎として身に付けてほしいのだ。

星幽霊

注意する事についての前置きが長くなってしまったが、話を本題に戻そう。「霊的存在」と一口にいっても様々な種類が存在する。日本では一般的に人間が死んだ後に残る霊を「浮遊霊」や「地縛霊」などと呼ぶが、西欧の神秘伝統ではそれらの霊は一般的に「星幽霊」と称することが多い。星幽霊とは基本的に、人間などの意識を持った存在が生み出した残留思念、偽りに満ちた幻影、死んだ人の物質に近しいエネルギー体が往き先に迷って出来た抜け殻などを総称して示す。

これらの存在は、「星幽界」に属する霊たちとして呼ばれる。こういう言葉を用いると、よく誤解されやすい事だが、星幽界(アストラル界)やメンタル界などと言っても、それは、どこか、こことは違う遠くに別の世界があるという事を指し示すものでは無い。我等が現在、存在する、まさにその場に星幽界と言うものは重なって存在するのだ。それゆえ、ここに座ってても、意識をそのレベルにまで変化させさえすれば、我らはすぐにその星幽界の存在を感じ取ることが出来る。

精霊

「精霊」は神秘伝統では自然界の物質や植物、動物などの意識のエネルギーとして広い範囲の霊的存在を指す。それらのエネルギーや存在は基本的に人間には理解範囲外のものであり、知覚されるとしても何らかの光や気配としてなど不明瞭な事が多い。

しかし、よく昔から伝わる伝承や精霊と出会ったという人の話では、精霊が人間的な考え方をしたり人間の言語を解したりして、人間と交流を行う事がある。これらは神秘伝統では次のように解釈されている。まず、人間の意識の奥には人間が外界を認識するための検閲機構・一種のフィルターみたいなものが存在するとされている。人間は、五感を通して得た情報信号を、これらのフィルターを通してその当人の顕在意識に外界を理解できるように変換しているのだ。

人間が精霊と呼ばれるエネルギー的存在と出会い、それらを何とか認識・理解しようとする場合、まずは五感を通して得た精霊の情報信号が人間の無意識のフィルターに送られる。しかし、前に書いたようにそういった存在は人間には理解しにくいものである事が多い。そのため、無意識のフィルターは、今までの記憶などから、そういった存在に近いイメージを拾い上げ勝手に精霊・エネルギー的存在を、そのイメージ的存在として変換する事が行われる。人間はこういった、無意識内にある一種のフィルター的なものを使うと精霊を認識でき、交流を行えるようになることがあるのだ。

このフィルターはその人物の住む土地・民族・社会的環境により大きな共通の「型」が形作られる事が多い。特に四大の元素霊と呼ばれるものは、西欧神秘伝統において有名な型になる。

天使

「天使」は日本では一般的には、天の神から使わされた、翼を持つ見目麗しい人間的存在、あるいは羽を生やした小さな赤子としてイメージされる事が多いだろう。当教育コースでは、日本の一般的なイメージとは別の形、ユダヤのカバラにルーツを持つ見方で「天使」という存在を捉える。その捉え方では、まず天使は「天使団」と「大天使」の2種類に分類する。「天使団」とは神の命を受け、この世界を動かすための「法則のエネルギー」を指す。この存在を霊視すると無数の小さな光のエネルギーが集まったものにみえる。天使団とはそういった、様々なエネルギーが寄り集まって、この世界を形作り運行しているものであり、そういった意味で「団(あるいは「choir」合唱隊)」と呼ばれる。それは、この世界を動かしている純粋なるエネルギー的な存在であり、その機能において盲目的な絶対なる「善」にして「正義」なる存在である。

大天使

「大天使」は、日本で一般的に考えられる翼を持つ人間タイプの霊的存在の「天使」のイメージに近いものである。キリスト教やユダヤ教では、大天使は「主」に仕える霊的存在とされている。しかし、近代の歴史研究では、これらの大天使は元々は古代に「神」として崇められていたものが、「主」の使いとしてユダヤ教やキリスト教に取り入れられたものが多いとされる。元々が神として崇められていた存在であり、偉大なる力と複雑な人格的側面を持つ。有名な存在としてはミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルなどが挙げられるだろう。

日本での霊的存在の見方

ここでは、「天使」や「星幽霊」などという言葉を使ったが、一般的な日本の現代人にとってはあまり身近に実感が湧かないかもしれない。これらは、キリスト教やユダヤ教の影響を受けた西欧の学徒達が、霊的存在をそれらの宗教のフィルターを通して認識した結果である。その為、日本人がそういったエネルギー的存在を認識するときは、神道や仏教などの影響を受けた、また違った認識の仕方をする事が多いであろう。たとえば、「天使団」は日本的な「精霊」や「守部」「神」、「八百万の神」などとされるだろう。また、「星幽霊」は単純に「幽霊」、あるいは「浮遊霊」「地縛霊」など。元素霊は「精霊」や「妖怪」。大天使などになると「明王」や「菩薩」などといった感じである。


□学徒は上記を理解・記憶すること。


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