聖書について


(グーテンベルク聖書。http://ja.wikipedia.org/wiki/グーテンベルク聖書より)

ヘブライズムの教典

先の学習でも少し触れたが、西欧神秘伝統の学習においてはヘブライズム、そして、その教理を記した書物「聖書」が重要になる。聖書は現在、世界各国の言葉に訳されて普及しているので、その存在は多くの学徒も知っていることであろう。一般によく見かけられる聖書の構成は大きく分けて2部に分かれており、前半が「旧約聖書」、後半が「新約聖書」という構成になっている(ものによっては旧約や新約、あるいはそれらの一部しかない構成となっているものもあるので注意されたし)。また、これに対して世の中には、外典、偽典といった聖書の存在もあるが、話が煩雑になるので、ここではそれらについての説明は割愛する。

元々、聖書は紀元前のヘブライの民の唯一神=「主(YHVH)」への信仰による宗教「ユダヤ教」の教義を記した聖典から始まったものであった。このユダヤ教の聖典は現在の聖書の旧約聖書の部分になる。やがて、イエス・キリストが生まれる事になる。イエスはユダヤ教の教徒だったのだが、その当時、ユダヤ教は内部の腐敗が目立っていたとされる。そういった状況を憂えたイエスは、今までのユダヤ教の信仰形態を見直し、本来の「主」への信仰と隣人への「愛」を重視する教えを説いたのだ。そして、イエスの死後、その弟子の十二使徒や追随者は、神はイエスによって人類と新しい契約をしたと考え、新しい宗教を作ることになる。それが「キリスト教」である。この「新しい契約」による聖典が、現在の新約聖書の部分となる。

旧約聖書と新約聖書

一般的には、旧約はユダヤ教の、新約聖書はキリスト教の聖典として認識されている。しかし本来、旧約・新約という呼び名はキリスト教が定義づけた分け方である事には注意してほしい。ユダヤ教にとっては、旧約の部分のみがその教義の聖典であり、新約はユダヤ教では聖典としては扱っていない。また、旧約と呼ばずに「タナハ」と呼んでいる。反対にキリスト教にとっては、旧約はその名のとおり、古い神との契約の教えの書であり、それを新しく補って完全なものにしたのが、新約聖書であるという考えを持っているのだ。ただ、この考えは教派によっては違うこともあるので注意する事。

キリスト教もユダヤ教も、西洋の神秘伝統に多大な影響を及ぼした宗教であり、その中心となる聖書の存在というものを無視しては西欧の伝統は理解できない。学徒も聖書の内容に関して、おおよその事は知っておいた方が良いだろう。ただ、聖書そのものを読もうとしても、とても膨大な量の文書であり、また、現代の学徒にとってはあまり意味のない文章も多いため、とても解りづらい事も多い。よって、学徒には出来れば何らかの解説書などを見つけて読んでおく事をお勧めする。


□学徒は下記を理解・記憶すること。

・聖書の構成(旧約と新約の2部ある事)を理解すること
・基本的に旧約はユダヤ教、新約はキリスト教の聖典であることを理解すること


・聖書についてはwikiでも解説されているので、そちらも参照されたし。

 日本語wiki(聖書)
 英語wiki(聖書)
・また現在、聖書はパブリックドメインとしてwikisourceでも読める。
 Wikisource:聖書


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