生命の樹について
上図に描かれている人物が持っている図形は、「生命の樹(ヘブライ語でオッツ・キィム)」と呼ばれる。この図は、現在日本でも漫画やアニメなどの影響で有名になったが、本来はヘブライ人の宗教ユダヤ教のカバラに伝わる秘儀を示すものだった。そして、現代の西欧神秘伝統でも、とても重要な扱いをされているものとなっている。
例えば、GD伝統においては、この生命の樹の図形を軸に様々な教義やシンボル、技法などが組み立てられている。また、生命の樹は意識を制御する技法を習得するため、世界中にある様々なものを人間の意識がどのように捉えるかを分類する万能表というものにもなりうる。いずれにしても、この段階では学徒はこの生命の樹について、とても重要なものである事を認識してほしい。
生命の樹は基本的に、セフィラ(複数形でセフィロト)と呼ばれる球状の存在と、それらセフィラの間を結び付け、ヘブライ語のアルファベット22文字と対応する「パス」と呼ばれる存在によって構成される。元々、この生命の樹の概念は長らくユダヤ教神秘主義カバラの中核として、ユダヤ教徒のみに伝わっていた。そして、図形としても殆ど一般的には知られていなかったものだった。
その状況が変化するのは、ルネサンスの到来による。キリスト教徒の知識人たちが異教に目を向け始めた時に、ユダヤ教徒のカバラ、そして、その中核にある「生命の樹という概念」の根本的なところにある、文字や数値の関係性、図形、象徴の扱いを通した合理的な考え方が、世界の様々な秘儀を解き明かし、霊的な意識を制御するのに、とても有用な事を発見したのである。
そして彼らによって、ユダヤのカバラを源としながらも、ユダヤ教徒以外にも汎用的に役立つ「オカルト・カバラ」が生み出されることとなる。また現在、一般的にも知られているような生命の樹の図形も、後の印刷術の普及もあり、世界各地の様々な人々の間に広まり発展することになった。
ちなみに上では「発展」と書いたが、実際、生命の樹の図形は時代や場所によって様々な種類のものが生まれてきているのだ。よく一般的には、世界の真理や秘儀と言うものは古代から変わらない不変のものであると思われやすい。しかし、オカルト・カバラは、元々その根本的なところにある合理的な考え方こそが重視されるものである。その為、様々な枝葉的な事柄は、それを受けとる人や時代によっても変化するものなのだ。
特にパスに関しては、様々な人によって様々な考え方が生まれている。セフィラの結び方も変化したり、なかにはパスとヘブライ文字の対応を全然変えてしまった人もいる。こういった、人によって捉え方が様々に変化するのも、オカルト・カバラの特色であるといえよう。そして、そのどれもが「間違いではない」ものなのだ。学徒も、よく理解しておいてほしい。
AM統合神秘行で扱う「生命の樹」は、GD団の考え方を元にしているが、もちろんHP作者独自の考え方も色々と加えられたものとなる。もし、他の教義を見ることがあっても、学徒は混乱しないように気をつけてほしい。ここで、AM統合神秘行で用いる生命の樹の図を示しておこう。
ここからは、上図の生命の樹について簡単に説明していきたい。まず上図の一番上の球体の上には、三重の無のヴェールというものが描かれている。そして、セフィラと呼ばれる10の球体(上図では、球体が11個あるが1番の球の真下にある番号のふってない球は特殊な扱いになる。その為、この段階ではその球については、とりあえず考えないでおいてほしい)が描かれる。さらに、その間を繋ぐ22のパス(小径)と呼ばれるものが描かれ、これらから生命の樹が成り立っている事を示す。
セフィラは1番上の白い球がケテル(ケテルとはヘブライ語の単語であり、意味は「王冠」となる)、右下に降りて2番目の灰色の球がコクマー(「智恵」を意味する)、左へ行って3番の黒い球がビナー(理解)、以後ジグザグに4番の青い球がケセド(慈悲)、5番目の赤い球がゲブラー(峻厳)、6番目の黄色い球がティファレト(美)、7番目の緑色の球がネツァク(勝利)、8番目のオレンジ色の球がホド(壮麗)、9番目の紫色の球がイェソド(基盤)、10番目の4分割されている色の球がマルクト(王国)と呼ばれる。パスはそれぞれが22のヘブライ文字(後に学ぶ)と対応する事となっている。
生命の樹については今後、当教育コースでも深く学習していってもらう事になるが、この段階では、生命の樹がどんな図形であるかと、下の各項目を覚えておくこと。
数 | 呼び名 | 英語の名前 | 呼び名の日本語訳 | 基本的な色 | キーワード |
---|---|---|---|---|---|
1 | ケテル | KETHER | 王冠 | 白 | 根源 |
2 | コクマー | CHOKMAH | 叡智 | 灰 | 超越的父 |
3 | ビナー | BINAH | 理解 | 黒 | 超越的母 |
4 | ケセド | CHESED | 慈悲 | 青 | 建設者 |
5 | ゲブラー | GEBURAH | 峻厳 | 赤 | 破壊者 |
6 | ティファレト | TIPHARETH | 美 | 黄金(黄) | 調停者 |
7 | ネツァク | NETZACH | 勝利 | 緑 | 感情 |
8 | ホド | HOD | 壮麗 | オレンジ | 知性 |
9 | イェソド | YESOD | 基礎 | 紫 | 星幽光 |
10 | マルクト | MALKUTH | 王国 | 黒、黄、オリーヴ、小豆 | 物質 |
□学徒は下記を理解・記憶すること。
・生命の樹の概要を理解すること
・生命の樹の各セフィラの名前と、図の上での位置を記憶すること
・生命の樹の各セフィラの数、名前の訳、キーワードを記憶すること
戻る