カバラの学習内容について


カバラは元々、文字と数値の関係を元に瞑想などの霊的行法を通して、旧約聖書に隠された「主」と世界創世の秘密を解き明かそうとするユダヤ教の霊的実践象徴体系であった。しかし、その文字と数値の関係性を用いる考え方は汎用性が高いため、後の様々な秘教学徒によって聖書に縛られない、オカルト・カバラなどの大系へと応用発展される事になったのである。ここでは、そのカバラの基本的な教義の概略について説明しておこう。

カバラの4種の分類

カバラの教義内容は次の4種を目的としたものに大きく分類される。

・実践的カバラ
・文字で表されたカバラ
・教義的カバラ
・書かれざるカバラ。

いずれも、詳しく解説しようとすると、とても多くの文字数を必要とするため、ここでは簡単な紹介にとどめる。

実践的カバラ

まず、第1の『実践的カバラ』は、秘教伝統を中心とした霊的実践手法である。

文字カバラ

第2の『文字カバラ』は、ヘブライの言葉や文字を使い、霊的な秘密を解き明かそうとする技法である。それは、「ゲマトリア」「ノタリコン」「テムラー」といわれる、3種の方法から成る。

この3つの技法のうち「ゲマトリア」とは、ヘブライ語の同数値を有する、ある語句とある語句は密接な関係を持つという考えから成り立っている技法である。詳細な説明は後にするが、例えばAという文字が1とする。Bという文字が2、Cという文字が3とする。この場合、「AB」という単語はCという文字と等価であると考えるのだ。暗号の一種といえよう。

次の「ノタリコン」とは、2種類の形態を有する省略法であり、その一つは、ある文からその頭文字と最後尾の文字を取り出して、言葉を作るもの。もう一つはその反対に、ある言葉を、一つの文章の語の頭文字あるいは最尾字の集合とみるものである。

最後の「テムラー」とは、文字の置換法で、一定の法則に従って、ある文字が他の文字に変換されるものである。以上の文字カバラは、聖書などの聖典に隠された秘儀(暗号)を読み解くために、よく使われる技法とされる。また、現在ではこの教義からカバラ数占いという占術まで出来ている。

教義的カバラ

第3の『教義的カバラ』は、哲学的神学的伝統を研究するものである。元来、カバラはユダヤ教の宗教的な以下の命題を解決するために用いられた。

・主の本質と象徴・属性
・宇宙の発生、或いは天地創造について
・天使と人間の創造
・天使と人の運命
・魂の性質
・天使、悪魔、四大の性質
・啓示された法の意味
・数字の高邁なる象徴
・ヘブライ文字に含まれる特別な神秘
・対立物の均衡。

以上の教義的カバラの教えは非常に複雑であり、一般に次の3つの概略に簡略化される。

・七つのカバラ的概念
・創造の四世界
・生命の樹。

七つのカバラ的概念

このうち、七つのカバラ的概念は次の様になっている。

1 ユダヤ教における、いわゆる唯一神アイン・ソフは世界の直接的創造主ではない。万物は根源的な源から、セフィロトというものに象徴される段階的流出を通して現れた。この事柄により、神は自らを顕現させたのである。そして、流出は我らがすむ物質の世界へと至る。

2 私たちが感知し、認識する事は全て生命の樹という図形を用いて、その意味を分類する事が可能である。それは生命の樹とは、あらゆるものの、原形的イメージで構成されているからである。

3 人間の魂というのは、今現在住んでいる、物質世界の起源より前には、より上位の世界に住んでいた。

4 受肉以前の人間の魂は、後にどの肉体に入るかを決定するための上位の「大広間」に棲んでいる。

5 個々の魂は、物質的肉体でのその一生を終えるまでに、無限の神に最吸収され得るまで浄化していなければいけない。

6 人間の魂の浄化は一度の人生では、その浄化は難しく、何回かの生を経なければいけない事が多い。これは「ギルグリム」と呼ばれる観念である。

7 この世界にある全ての魂が、皆、完成に至ったとき、悪しき天使達も呼び起こされ、そして、生きるもの全ては、唯一なる神からの愛の接吻を受けて、神聖存在へと変化する。そして、これ以降、顕現していた宇宙は存在しなくなる。また、新たな世界が始まるまで。

創造の四世界

創造の四世界とは、「神」が自分自身をこの世に表出せしめるに通る、次の4つの段階を指す。

・アツィルト界
・ブリアー界
・イェツィラー界
・アッシャー界

よく誤解される事だが、これらは別々の世界では無く、連続する世界であり、重なり合っている世界である。例えて言えば、今、この場所に満ちている空気は、水素と酸素から成り立っているが、水素界と酸素界が分かれて成り立っているわけではない。そういった感覚で捉えてもらえば理解できるだろうか?。

また、それぞれの世界に、それぞれの「生命の樹」があり、これらを完全に理解しようとすると、とても複雑なものになる。ここでは、次の簡単な概略を理解してもらえれば良いだろう。まずアツィルト界は、元型、神聖なる光輝、全ての始まりを意味する段階であり、まだはっきりとしたものを持たない、人間にとっては観念的な世界としてとらえられるものである。

しかし、ここにはもう既に全ての設計図が含まれている。芸術家が絵画を描く作業に例えるならば、これから何かを描こうという「意志」を持った段階がこの世界と例えられているといえるだろう。また、この世界には「神名」といわれる神の根源的な力の象徴というものが対応するとされている。

ブリアー界は、創造の世界、はっきりとした方向性を持った力が動きはじめる段階である。何かを作ろうとする意志が活発に動きまわっている世界であり、これを先の芸術家に例えるならば、何を描くかを決め、画用紙の上にこれから描く絵が浮かび上がっているような感じの段階であろう。また、この世界には「大天使」というものが対応しており、これは「個」としての純粋な強力な力の象徴である。

イェツィラー界は、形成の世界、様々な力が入り交じって、活発にものを形作っている段階である。これを先の芸術家に例えたらば、画用紙に絵筆で実際に絵を書いている段階といえるだろう。また、この世界には「天使団」が対応する。この存在は「グループ」として、様々な事をなす力の象徴である。

アッシャー界は現実の世界。私たちの肉体や物質が属している段階とされる。他の三界よりも濃密、かつ固いものから成りたつ。これを先と同じく芸術家に例えるならば、絵が完成した段階になるだろう。また、この世界には「精霊」も対応する。そして、アツィルトから放たれた神聖なる光輝は、幾つもの段階を経ると、やがて歪んだ光となる。その光の行き着く世界が「クリフォト」といわれ、ここには、いわゆる「悪魔」が対応する。

生命の樹

「生命の樹」については、AM統合神秘行の後の学習で詳しく学習する事になるであろう。

書かれざるカバラ

そして、第四の『書かれざるカバラ』は、その名の通り、口伝によって伝えられた秘儀中の秘儀といえるものである。


□学徒は下記を理解・記憶すること。

・カバラの四種の内容を記憶すること
・三種の文字による技法を記憶すること
・四界の概念を理解・記憶すること


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