姿勢について


実践学習には様々なものがあるが、その実践に際して共通して重用視される幾つかの”体の姿勢”というものがある。こちらでは、その解説をしていこう。

西洋の神秘伝統における「姿勢」

神の座位

西欧の神秘伝統では、まず、次の2つの姿勢が基本的なものとして挙げられる。一つ目は、「神の座位」と呼ばれるものである。これは、椅子に座り背をまっすぐにする。手は軽く握って、両腿の上に乗せる。足も軽くそろえて足の裏は地面につける。そして、少し、顎を引き気味に前を見る姿勢である。この際に用いる椅子は一般的なまっすぐな背もたれのついているものが良いであろう。クッションは、ちょっと固めにすること。あまり柔らかいものだと姿勢が崩れてくる。この姿勢は、西欧の神秘伝統では中心的なものであり、主に瞑想を行う際に用いられる。

この姿勢では、初心者の頃は、瞑想しているうちに居眠りして椅子から転げ落ちる人もいるので、そういった場合は、ひじかけもついていると良いだろう。注意する点としては、あまり緊張しすぎないことである。座っている場合でも、その姿勢を保つため、様々な箇所の筋肉が緊張するのは仕方ないことである。

しかし、実践学習をはじめたばかりの学徒は、この姿勢を行う為には不必要な緊張の個所が多く存在したりする。リラックス法の実践学習が進んでくると、こういった不必要な緊張をしている箇所が認識できるようになるので、それらの部分を徐々にでも緊張をほどきながら、この姿勢を保てるように学習してほしい。

神の立位

次は「神の立位」と呼ばれるものである。これは簡単に言えば「気をつけ」の姿勢である。背をまっすぐにして立ち、手は体の横に垂らす。足は少しそろえ気味にして立つこと。そして、顔は顎をちょっと引き気味にして、まっすぐに前を見ること。この立位は術式の際の基本的な姿勢として用いられる。この姿勢でも、慣れてくるまでは、自分の体に意識を向け、不必要な筋肉の緊張をほどくように心がけていってほしい。

ガレス・ナイトの提唱する姿勢

以上が基本的な姿勢であるが、西欧神秘伝統の研究者として有名なガレス・ナイトはそれに加えて2つの姿勢を提唱している。3つ目となるのが「祈りの姿勢」である。これは、立位から膝を折り曲げて、地面に膝を付ける。その名の通り神に対する祈りを行う姿勢である。そして、もう一つが「臥位」、端的に言えば床に寝た姿勢である。床に体を横たえ上を向く。両手足はやや広めに力を抜いた状態を取ること。この姿勢は瞑想や星幽体離脱に使えるが、慣れないうちはそのまま寝てしまうので注意が必要である。

東洋の神秘伝統における「姿勢」

以上が、西洋の神秘伝統で用いられる「姿勢」である。読者は、これを読むと、よくヨガなどで用いられる、座って行う姿勢が無いのに気づくかもしれない。これは、西洋の文化の影響が大きい。西洋の文化では、普段の生活は椅子に座るか、ベッドに横になるかだけなので、股関節や足の各箇所が固くなってしまっていると言われている。そのため、西洋人の多くが、床に直に座って、あぐらなどを取ろうとすると、足の関節に極端な負荷がかかるためだといわれているのだ。また、靴をはいたままで部屋で生活もするので、床に直に座ると汚いという事もある。

しかし、西欧神秘伝統の中でも、東洋の教義も取り入れたクロウリーの流派では、ヨガの座位が基本的な行法としても用いられいている。また、日本人は畳に直に座る文化なので、座位の方が用いやすいという事もあるだろう。よって、当サイトの実践学習では、床に直に座る「姿勢」も学習してもらう。

胡座

東洋の座位のうち、まず一番簡単なものは「胡座」、いわゆる「あぐら」である。方法は説明するまでも無いと思うが、床に座り両足を左右に開く。膝を曲げてどちらかの足首を、違う方の足首に乗せる方法である。背筋はなるべくまっすぐにする事。手は両膝の上に乗せるか、あるいは簡単に下腹のあたりで組んでおいて良い。

東洋の座位に共通するが、これらの姿勢は主に瞑想を行うのに用いられる。この際も身体に不必要な緊張が無いように心がけること。また、あぐらの姿勢は崩れやすい。横側に傾いたり、特に猫背になりやすいので、その点にも注意すること。

半跏趺坐

次に、「半跏趺坐」がある。あぐらの姿勢から、右足首を左足の腿の下に置き、左の足首を右側の足の腿の上に乗せる、あるいはその逆の方法である。座位としては、次に紹介する結跏趺坐が一番安定しているので、胡座と半跏趺坐は、結跏趺坐が出来るようになるまでの練習法として、あるいは、どうしても結跏趺坐が出来ないときの代用法として用いると良いだろう。半跏趺坐で片方の足が痺れてきたら、適宜、足を組み替えること。ただ、慣れてくれば、ほとんど痺れないようになってくる。

結跏趺坐

最後に紹介するのが、「結跏趺坐」あるいは「蓮華座」と呼ばれる座位である。仏教やヨガの瞑想では基本として用いている座位である。方法としては、右足の足首を左腿の上に乗せ、左の足首も右腿の上に乗せる。あるいは、その逆を取る。一番安定性が良く、東洋の瞑想法ではこの座位がほぼ必須となる。

ただ、慣れるまでは足に負担がかかって痺れたりする場合もあるので、適時、足を組み替えたりすると良いであろう。また、人によっては、この姿勢を取ろうとすると、関節を痛める事もあるかもしれないので、あまり無理をしすぎないように。

まとめ

以上、基本的な姿勢を幾つか紹介してきたが、それぞれの姿勢によって、向き不向きのある行法がある。例えば、日本人にとって能動瞑想や受動瞑想は床に座って行う方が訓練しやすいかもしれないが、中央の柱の行法でマルクトを形成するときは、マルクトが地面の下になってしまうので、この場合は神の座位で行う方が訓練しやすい、などなど。

学徒は、様々な実践学習において、自らで適した姿勢を選べるようにしていってほしい。また、いずれの姿勢においても、緊張をなるべく少なくする事。また、立位以外においては、あまり身動きせずに長時間の瞑想にも耐えれるように訓練していくこと。


□学徒は下記を理解・記憶すること。

・「神の座位」「神の立位」を理解すること。
・「胡座」「半跏趺坐」「結跏趺坐」を理解すること。


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