秘教的象徴について

象徴とは

象徴(シンボル)とは、簡単に言えば、あるものを別のものによって示す方法である。一般的に、ある概念や抽象的な観念などを別の方法で他者に伝える方法とされる。これには、主に記号や図形、絵画などが用いられるが、広義な観点からは、音楽や匂い、体の動きなど様々なものも象徴として用いられるだろう。

この象徴という方法は世界的にも、家紋や国旗などにおいてよく使用されているものである。そして、日本は特に、この象徴を頻繁に用いる文化圏とも言えるだろう。それは、日本で日常的に用いている「漢字」の多くが、様々なものを象って作られた象徴といえるものだからだ。例えば「山」という漢字を見れば、多くの人は△の形をした大きく盛り上がった土地を思い浮かべるが、これは解りやすい象徴の用い方といえよう。

神秘伝統における象徴

我々が学ぼうとしている神秘伝統においては、この象徴を扱う方法が特に重要となる。神秘伝統では、何らかの様々な関連するイメージが意識の中に複合されて出来あがる、「複合的」な「観念体」というものを頻繁に扱う。象徴が、この存在またはイメージを制御する方法の、重要な「鍵」として用いられるのだ。

「観念複合体」あるいは「複合的観念体」という言葉が初耳の学徒も多いと思われるため、ここで少し、その概略を説明しておこう。まずは例えば、先にも学習した月のシンボルを思い出してほしい。何も知らない一般の人が、この月のシンボルを思い浮かべた場合、通常、空に見える月をそのまま思い浮かべるくらいの事が多いであろう。しかし、神秘行においてこの月の象徴に対する学習や研究が進んでいくと、様々なイメージや雰囲気、感覚が思い浮かんでくるようになるのだ。

イメージの制御

月の象徴を見ながら、ある種の意識の切り替えを行うと、例えば美しきディアナが深夜に従者たちを引き連れて、深い森の中を狩りをする姿が思い浮かんでくるかもしれない。また、深夜に魔女が人里離れた三叉路で何らかの儀式を行っているところが思い浮かぶ事もあるだろう。深夜に行われる幻想的な光景。森の中の闇に紛れてこちらを伺う動物達の気配。夜の静けさや夜霧の冷たさ。こういった「月」に関わる様々なイメージが意識内に複合的に記憶されて出来上がったものが複合的観念体というものである。

そして、この複合観念体を意識に呼び起こし制御するのが、神秘伝統における、象徴の主な用い方なのである。学徒にも、これまで教育コースにおいて様々な四大や惑星のシンボルなどを学習してもらったが、それらはこの象徴の扱い方の学習の初歩になるものである。これから教育コースにおいては、この象徴を使うことにより、複合的観念体を意識内に大きく育て制御出来るようになる技法を学んでいくことになる。


□学徒は上記を理解・記憶すること。


写真素材はhttp://www.ashinari.com/より


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