黄道十二宮について
(北の天球の星座を描いた古い絵。円の周りに沿って黄道十二星座が描かれている)
太陽の通り道=黄道
先にも説明したが、太陽は天球の星座の中を1年かけて回っていく。太陽は毎日同じ場所から昇っていると考える方もいるかもしれないが、実際は毎日少しずつ天球の中での位置をずらしていってるのだ。例えばある日に太陽が乙女座の中にいれば、その約1ヶ月後には太陽は天秤座の中にいるという事になる。この天空の太陽の通り道を黄道という。ちなみに、これと似た考え方で月の通り道を白道と呼ぶ。
黄道十二宮の誕生
黄道は、天球360度に渡っているが、それは30度ずつ分割され、十二の「宮」という領域が作られた。歴史や土地の違いに伴い、様々な考え方が生まれたが、現在の西欧の神秘伝統で用いられているものは、「白羊宮」「金牛宮」「双児宮」「巨蟹宮」「獅子宮」「処女宮」「天秤宮」「天蝎宮」「人馬宮」「磨羯宮」「宝瓶宮」「双魚宮」と呼ばれる十二宮となっているので、よく記憶しておいてほしい。
(天球360度を12に等分割して作られた「黄道十二宮」)
星座と宮の違い
これらの宮のイメージは、一般的によく知られる星座としての「牡羊座」「雄牛座」「双子座」「蟹座」「獅子座」「乙女座」「天秤座」「蠍座」「射手座」「山羊座」「水瓶座」「魚座」と対応する。ただ、よく注意しておくべきことがある。上記のように、十二宮のイメージは、ギリシア・ローマ神話における星座の神話から来ているのだが、実際の夜空の対応する星座のある位置や領域が、そのまま十二宮の位置になる訳では無い事を理解しておいてほしい。
西欧神秘伝統で用いられる十二宮とは、黄道と天の赤道が交わる点である春分点を基準に、全天360度を30度ずつに分割した領域を意味するものであり、実際の星座の領域とは全然異なるものである。ネットで星座の形を調べてみるか、星図を持っている人はそれを見て欲しいが、星座の形には様々なものがあり、十二宮のように単純に三十度ずつに分割できるようなものではない。
また、十二宮の考え方が生まれた2000年以上前には、春分点は牡羊座にあったため、白羊宮の領域と実際の星座の牡羊座は、ほぼ重なっていた。しかし、春分点は地球の歳差運動により、少しずつ西へとずれていってしまう。その為、黄道十二宮の考え方が生まれてから、2000年以上の長い年月が経った事により、現在、白羊宮とされる領域は、実際には星座一つ分、西になる魚座に移動してしまっているのだ。
以上、少し難しいことまで踏み込んで説明してしまったが、学徒はこの段階では、各十二宮と、その対応する星座、由来、意味合い、象徴記号を覚えることを目的としてほしい。
白羊宮(Aries)
白羊宮は十二宮の最初になる宮である。星座としては、牡羊座に対応する。その由来は、ギリシア神話に登場してくる、ゼウスが使わした金色の毛の羊の伝説から来ている。この宮は占星術的に春の訪れ、ものごとの始まりを告げる、活発なエネルギーを示すものである。象徴記号は、一般的に牡羊の角と頭をかたどったものとされている。
(牡羊座の古い星図)
金牛宮(Taurus)
金牛宮は星座としては、雄牛座に対応する。由来は、ギリシア神話でゼウスが王女エウロペに近づくために変身した牛の姿から来ている。占星術的な意味としては白羊宮で生まれた力を育てる母性愛や安定した力、成長などを意味する。象徴記号は、白羊宮と同様に、牛の角と頭をかたどっているとされている。
(雄牛座の古い星図)
双児宮(Gemini)
双児宮は星座としては、ふたご座に対応する。その由来はギリシア神話で、アルゴー号の話などで活躍したカストルとポルクスの双子から来ている。占星術的には二元性、言語や表現力、器用さを意味し、象徴記号は、並んだカストルとポルクスをかたどっているとされる。
(双子座の古い星図)
巨蟹宮(Cancer)
巨蟹宮は星座としては、蟹座に対応する。その由来は、英雄ヘラクレスが十二の難行の一つとしてヒドラと戦った時に、兄弟であったヒドラを助けようとして、ヘラクレスに殺された大蟹から来ているとされる。占星術的には、献身性や同情性を意味するとされ、その象徴記号は、蟹の爪、あるいは2つの大爪から来ているとされる。
(蟹座の古い星図)
獅子宮(Leo)
獅子宮は星座としては、獅子座に対応する。その由来は、ギリシア神話で、英雄ヘラクレスの十二の難行の一つとして退治された、ネメアの大獅子から来ている。占星術的には、その姿通り強い意志や行動力を示すものとされる。象徴記号は、獅子の横から見た姿あるいは獅子の尻尾を模している。また、古くは獅子のギリシア語の頭文字であるラムダから来た形の象徴記号を使用していた事もあったとされる。
(獅子座の古い星図)
処女宮(Virgo)
処女宮は星座としては、乙女座に対応する。その由来は、ギリシア神話の、正義と天文の女神アストレイアから来ているとされる事が多い。また別の説として、デメテルやペルセポネであるとする事もある。占星術的には知性や繊細さ、豊穣を意味するとされ、象徴記号は、麦穂を持っている女性をかたどるものであり、右部の交差したところが麦穂に対応する。また、別の説として麦の穂そのものをかたどるものであるとする説や、”処女”のギリシア語(PARTHENOS)の最初の三文字(Παρ)を組み合わせて作られた記号だとする説もある。
(乙女座の古い星図)
天秤宮(Libra)
天秤宮は星座としては、天秤座に対応する。その由来はギリシア神話で、女神アストレイアの持つ天秤から来ている。占星術的意味合いはバランス感覚や正義を意味するとされ、象徴記号は、天秤をかたどっているとされる。
(天秤座と蠍座の古い星図)
天蠍宮(Scorpio)
天蠍宮は星座としては、蠍座に対応する。その由来は、ギリシア神話で、傲慢になった英雄オリオンを刺し殺した大サソリから来ているとされる。占星術的にはその毒の一撃から死と再生を司るもの、性的意味合い、またサソリ自体は臆病なところから慎重さも意味する。その象徴記号は、サソリをかたどっているとされ、右の矢印状のところがサソリの尻尾の針になる。あるいは、サソリの尻尾自体をかたどったものであるとする説もある。
人馬宮(Sagittarius)
人馬宮は星座としては、射手座に対応する。その由来は、ギリシア神話に登場するケンタウロス(上半身が人間で下半身が馬という存在)の一人であるケイローンから来ている。占星術的には、熱望、またケイローンが哲学にも通じていたところから哲学的な知性を意味するとされる。その象徴記号は、ケイローンの持つ弓矢から来ている。
(射手座の古い星図)
磨羯宮(Capricorn)
磨羯宮は星座としては、山羊座に対応する。その由来は次のようなギリシア神話から来ている。昔、神々がナイル川沿いで宴会を開いているときに、突然、恐ろしい怪物テュフォンに攻め込まれてしまった事があった。驚いた神々は、それぞれ動物に姿を変えて逃げ出そうとしたが、パンは慌ててしまい、上半身が山羊、下半身が魚の状態でナイル川に飛び込んでしまった。その際の姿が現在の星座になっているという。
占星術的には勤勉さ、深慮、倹約性を意味するとされる。その象徴記号は、山羊座の姿をかたどっているとされ、別の説としては山羊のギリシア語(TRAGOS)の最初の2文字(τρ)を組み合わせて出来た記号であるとする説もある。
(山羊座とみずがめ座の古い星図)
宝瓶宮(Aquarius)
宝瓶宮は星座としては、みずがめ座に対応する。その由来はギリシア神話で、ゼウスがさらった美少年ガニメデから来ている。ガニメデはゼウスの側で、水がめから水を流し続けているのだが、その姿をこの星座は模しているのだ。占星術的には親切で同情的だが束縛を嫌う意味合いを持つ。象徴記号は、瓶から流れ出る水、あるいはさざ波、あるいは天と地をかたどっているとされる。
双魚宮(Pisces)
双魚宮は星座としては、魚座に対応する。その由来はギリシア神話では、山羊座同様に宴会中に攻め込まれ、魚に姿を変えて逃げ出した、アフロディーテとその子であるエロスの姿であるとされる。この魚座は2匹の魚がリボンで結ばれた姿になっているが、これは2人が逃げ出すときに離ればなれにならないようにリボンで体を結び合ったものである。占星術的には神秘性、聖性、感受性を意味するとされる。象徴記号は、2匹の魚とそれらを結びつけている紐をかたどっている。
(魚座の古い星図)
□学徒は上記を記憶・理解すること。ここでの学習のポイントを
まとめると下記になる。
・12宮の呼び名を覚えること。
・12宮の各星座の対応を覚えること。
・12宮の象徴的図形を覚えること。
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