古代の七惑星について

古代の七惑星

先に学習したように、天空の多数の星々の中でも、特に惑星は他の恒星に比べて、ひときわ明るく光を放ち、不可思議な動きをしたため、その存在を重視され、様々な土地で、そこに暮らす人間達の無意識を物語る神話の、重要な神々と結びついた。統合神秘行においても、この惑星に象徴される力を重要視する。特に太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星の七つの星は「古代の七惑星」と呼ばれ、その力の扱い方は、重要な事として学ぶようになるので覚えておいてほしい。

天文学的には太陽は恒星、月は衛星とされ、惑星の範疇とは違うと考える学徒もいるかもしれないが、人間の意識の中では、いずれも同じ天球を回る輝く天体として見なされるので、秘教伝統においては惑星の範疇にいれる。ただし、太陽と月は惑星とされても特に別格の存在として扱われる事が多い。

また、近代になって天王星、海王星、冥王星などの遠方の惑星(冥王星は惑星の範疇からは外されたが)も発見され、その力や影響について、現在、秘教伝統界でもいろいろと論ぜられているが、統合神秘行においては、「人間の眼で見える」惑星、イメージとして扱える古代の七惑星を特に重視する。繰り返すことになるが、統合神秘行ではこの様に現在の科学的知識を知っておいた上で、人間の意識に認識されるイメージを扱っていく事になるので、理解しておいてほしい。

惑星のイメージ

西欧の秘教伝統における「惑星」は、宇宙空間に浮かぶ土やガスの球体そのものではなく、人間の意識の中で、ある固有の力を発する源の象徴、複合的観念体として扱われる。現在、それらの力はユング心理学でいう「元型(アーキタイプ)」と結び付けて考えられたりもしている。一般に多く用いられている惑星のこれらのイメージの源は、基本的にはギリシア・ローマ神話から来ている。

学徒の学習が進み、惑星や12宮の力に実際に触れるようになるまでには、最低限ギリシア・ローマ神話に関しての理解は必須となるので、関係書を何冊か読んでおいて理解を深めておいてほしい。ちなみに、ギリシア神話とローマ神話で違う名前で呼ばれる神でも、存在的にはほぼ同一視される神も多いので、その点は注意しておく事。

七惑星にはそのイメージから各々に、割り当てられる象徴的記号とギリシア・ローマ神話の神が存在する。象徴的記号については占星術の本でもう既に学徒も見ている事だろう。この象徴的記号のルーツについては、幾つかの説がある。割り当てられた神の持ち物を模した記号であるとされるものから、地球の象徴である十字、太陽の象徴である円、そして月の三日月を組み合わせて作られたとする錬金術的解釈から来ているとするもの。また、その他のものとして惑星の番号である数字からきているとする場合もある。これらも含めて、各惑星の象徴的記号と概略の紹介を下記に行っておこう。

各惑星の説明

月(Moon)

「銀の星」とも呼ばれる、この存在は、闇夜に一番強く輝く事から人の無意識に最も強く影響するものであるとされてきた。古くの伝承より、月は地球に最も近しい存在とされてきたが、近代の科学でも、月は地球の衛星として、この説が認められる形になっている。

月に対応するギリシア・ローマ神話の神はセレネ、アルテミス、ディアナ、ヘカテ等とされている。月には地球からの見た目上、満ち欠けの周期が存在し、その移り変わる様子からも特別な存在としてみなされた(厳密には水星と金星にも満ち欠けは存在する)。

全く見えない状態である「新月」から始まり、「上弦」の月、「満月」、「下弦」の月、そして新月へとほぼ28日周期で変わる。月の象徴的記号は、上記のように三日月で表される事が多いが、より細かく考慮される場合は、上記の記号が上弦の月を象徴し、完全な丸(○)が満月、上記の記号の左右逆向きが下弦。黒丸(●)が新月を象徴する。その代表的な三日月の象徴的記号の由来は、神話的にはアルテミスの持つ弓ともされる。


アルテミス(ギリシア神話)、ディアナ(ローマ神話)(http://www.theoi.com/Gallery/S6.1.html)

水星(Mercury)

水星は地球からの見かけ上、太陽の周りを細かく素早く動くところから、ギリシア・ローマ神話では素早さを旨とする伝令や知識の神であるヘルメスやメルクリウスと結びつけられてきた。その象徴的記号の由来は神話的には、ヘルメスの持ち物であるカドゥケウスの杖(2匹の蛇が絡み合った杖)、もしくは帽子を被ったヘルメス自身の頭を模しているとされる。錬金術的には地球の象徴である十字を一番下にして、その上に太陽、その上に月を配したものとなる。


ヘルメス(http://mythology.wikia.com/wiki/Twelve_Olympians)

金星(Venus)

金星は、明け方や夕方に強く輝く星であるところから、日本では「明けの明星」「宵の明星」と呼ばれてきた。ギリシア・ローマ神話ではその輝く美しさから、愛と美の女神であるアフロディーテやヴィーナスと結びつけられている。その象徴的記号は、一般的には後で示す火星の象徴と対応して、女性や女性器を示すものと考えられる事が多い。神話的には、アフロディーテなどの女神の持つ手鏡やネックレスであるともされる。

また、このシンボルはアンク十字とも呼ばれ、古代エジプトでは多産・豊穣、そして、死からの復活に関わる重要な象徴として扱われてきた。錬金術的には、太陽と地球の象徴を組み合わせた象徴として構成される。


ヴィーナスの誕生(サンドロ・ボッティチェッリ画)

太陽(Sun)

太陽はその輝きを以て、人々からの崇拝を集める中心的な天体である。人はこの存在が出ている間に活動するものであるところから、太陽は人の意識の明るい面、認識される面=顕在意識の象徴ともされる。逆に月はその輝くときに人間は眠っているところから、人間の無意識の面を象徴するとされる。基本的には、太陽はその明るさと暖かさから、様々な生命を育む、癒しや慈悲の象徴として見られる。

対応するギリシア・ローマ神話の神はアポロンやヘリオスである。象徴的記号は上記のように、丸の中央に点である。この由来としては、ルネサンス時代にエジプト神話に登場する太陽の神であるラーの象徴が取り入れられたとされる説が一般的である。ちなみに、ルネサンス以前は太陽の象徴は上記とは別の記号であったとされる。


アポロン(http://www.theoi.com/Gallery/S5.1.html)

火星(Mars)

火星は、その赤い不吉な輝きからギリシア・ローマ神話では、戦いの神である、マルス、アレスと結びつけられた。その象徴的記号は一般的には前の金星と対応して、男性あるいは男性器を示すものとされる。神話的にはマルスの持つ、矛と盾から来ているとされる。錬金術的には一般的によく知られている上図とは少し形が変わり、丸の上に十字が乗る形になっている。


マルス(http://ancienthistory.about.com/od/religionmyth/ig/Roman-Gods/Mars-or-Ares.htm)

木星(Jupiter)

木星は十二年かけて天球を一回りする。ギリシア・ローマ神話では、その雄大な動きから主神であるゼウス、ジュピター(ユピテル)と結びつけられた。象徴的記号は、神話的にはゼウスのZの字とその持つ雷(いかずち)を組み合わせたものとされる。

あるいは、二本の雷が組み合わさったものともされる。この説では、一般的な上図の記号とは形が変わり、逆卍に近い形になる。また、別の説では古くにおいては、この木星が4番目の惑星とされていたところから、4の数字がその由来だとする説や、その象徴的動物である鷹を模したものであるとの説もある。錬金術的には、地球の十字の左側に月を組み合わせた形となる。


ジュピター(http://ancienthistory.about.com/od/religionmyth/ig/Roman-Gods/Jupiter-or-Zeus.htm)

土星(Saturn)

土星は七惑星の中でも、最も天球を長い時間をかけて回るところから、時の管理者としてギリシア・ローマ神話ではクロノスとサトゥルヌスをその対応する神として割り当てた。象徴的記号は、神話的には、それらの神の持つ鎌であるとされている。見方としては十字のところが持ち手で、カーブしているところがその刃となる。また、別の説では木星と同様にこの土星が5番目の惑星であるところから、5の数字だとする事もある。錬金術的には、地球をあらわす十字の下に月を組み合わせた図として構成される。


クロノス(http://en.wikipedia.org/wiki/Cronus)

□学徒は上記を記憶・理解すること。ここでの学習のポイントを
まとめると下記になる。

・七つの惑星を覚えること。
・七つの惑星の記号を覚えること
・七つの惑星に対応する神を覚えること。


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