ユング心理学について3

ここではユングの考えた人間の意識の段階的構造、顕在意識から集合的無意識というものについての説明をしていく。

顕在意識

人間は普段、五感を使って外界の情報の様々な情報を取得。そして、それらを元に言語による思考を用いて、次の行動を決めている事が多いものである。このように人間が通常認識、自覚している意識を心理学では「顕在意識」と呼ぶ。

この意識は社会生活を営むにあたって、論理的に物事を処理するために常に働かせているものであり、また、この意識は一番認識しやすく、いつも自覚しているものなので、人間はこの意識のみが「自分」というものの全体なのだと誤解しやすいものである。

無意識

しかし、実際は人間には、五感や様々な方法を通して得た情報から必要な情報を顕在意識に伝えたり、また誕生から今この瞬間まで取得してきた情報を全て記憶し眠らせている「無意識」という広大な意識領域があるとされているのだ。この無意識(潜在意識という呼び名であらわされることもある)という領域までは、よく、一般的にもその言葉を聞くことがあるので、知っている人も多い事だろう。

集合的無意識

しかし、ユング心理学ではさらに、その奥に個々の人の意識だけに限らない、その集団や社会に属する人達の意識に共通する「集合的無意識」と呼ぶ領域もあるとしたのだ。これを例えると、下の図のような海の上に浮かぶ小島として、よく説明される。

この図を海に存在する小さな島と見立ててほしい。この島一つ一つが人間の個人個人の意識を模した図である。海の上に出ているのが人間の通常の意識である顕在意識であり、海の下に潜っているのが無意識である。人間が普段認識している顕在意識はこの図を見ると解るように、とても小さなものであることが見て取れるであろう。

だが、ひとたび、海の中にもぐってみると、島はその下に大きな土地を持っていることが解る。人間の顕在意識と無意識もこのような関係性であるものと考えてほしい。そして、これらの一つ一つの島は、その一番下で他の島、すなわち他人の個人的意識と繋がっている。この島と他の島を一番下で結びつけている土地が集合的無意識というものと理解してほしい。西欧神秘伝統では、この集合的無意識という場で、様々な人が繋がり、いろんな情報をやり取りしていると考えているのだ。

パソコンに例えた意識の構造

また、最近になってパソコンが進歩・普及するにつれて、別の例えとして人間の意識の構造をパソコンの構造に例える考え方も有名になってきた。パソコンというものは、頻繁に扱う情報は、メモリというすぐに情報が取り出せる装置に記憶している。

しかし、メモリはその性質上データをためておける領域が小さいのだ。そのため、通常はあまり使わない情報は、ハードディスクという装置に記憶しておく事になる。このハードディスクはメモリと比較してとても領域が広いため、多くのデータを記録しておけるのだ。そして、必要になったデータは、このハードディスクからメモリへと呼び出してくることになる。人間の意識の構造も、これにかなり似通っているといえよう。

人間の顕在意識というものはメモリと似ており、その扱える情報量がとても少なく、そのため、外界から入ってきた情報のうち必要ないものや、少し前以前の出来事はすぐ記憶(無意識)=ハードディスクの中へと押しやってしまう。しかし、必要があると、その記憶の中から、必要な事項のみを取り出し物事を処理していくという方法を取っているのだ。

インターネットでの例え

また、最近のPCは単独で動くだけでなく、インターネットを通して他の無数のPCとも繋がり、その情報をやり取りするようになった。実は、人間の意識の奥、集合的無意識もこれと似た機能を持っているといえるだろう。ただ、最近のPCは便利になって、インターネットもすぐ繋げて使えるようになったが、現実の人間の意識と集合無意識の関係は、それほど簡単とはいえない。

人間の顕在意識は、PCでいうインターネット=集合的無意識とやり取りするためのプロトコル(言語)を通常、ほとんど理解することが出来ないのだ。そのため、人間は基本的には集合無意識の情報を有効に利用することが出来ないのである。しかし、この集合無意識の情報を得ることは、自己というものを本当に知るための統合神秘行では、必要不可欠である。

その為、この教育コースでは、集合的無意識へのプロトコルを扱えるようにするための、変換プログラムを意識に組み上げていくという事に似た訓練を行っていく事になる。


□学徒は上記を記憶・理解すること。ここでの学習のポイントをまとめると下記になる。

・意識の階層構造を記憶すること。
 (顕在意識→無意識→集合無意識)


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