ユング心理学について


西欧神秘伝統、そして世界各地の神秘行は古代から伝わる様々な秘教的知識を元に、人間にとって最も大事な「意識」というものを研究する「自己探求」という事柄を、その大きな目的の一つとして持っている。しかし、現代にあって、こういった方面の知識を学びだした一般的な現代人としての学徒は、その理論が迷信や虚偽なのではないか?という疑念を持ってしまう事もあるだろう。

これについては、近代に発展してきた心理学という学問、特にCGユングという心理学者の提唱した分析心理学の理論が、実際の医学的な治療実績を積み重ねるうちに、古代から伝わる神秘行の主張する理論と似たような考えに辿り着き、その考え方を現代人にも比較的解りやすく説明することにおいて、大きな成果をおさめた。そのため、現在、神秘行を学習しようと思うものにとっては、その基礎的な知識としてユング心理学についての学習が欠かせないものになっている。この教育コースでもユングの心理学について、神秘行的な観点から見た学習を行っていってもらう事になるので、学徒はその旨、認識しておいてほしい。

ユングの略歴

Carl Gustav Jung(カール・グスタフ・ユング)は1875年スイスにある、霊的雰囲気の強い土地性を持つボーデン湖畔に生まれた。彼は幼い頃から自らの心の内面や精神世界・霊的世界についての特別な関心を抱く。長じるにつれて彼は、ゲーテやニーチェなどの哲学的な著作に没頭。そして、自らの進む道として人間の心(魂)を扱う精神医学(心理学)の研究を選ぶことになる。学位論文が姪の霊媒現象についての考察であった事は、彼のその後の研究方向をよく示していたとも言えよう。その後、チューリヒ大学の病院に勤めはじめた彼は1903年にエンマと結婚。1907年頃に、精神分析学の先駆者であったフロイトを知ることとなる。フロイトの論に感銘を受けたユングはフロイトと親交を結び、その才能を持って、一時はフロイトの後継者と目されるまでにいたる。しかしフロイトの理論だけに終わらず、彼独自の心理学の理論を発展させたユングは、その結果フロイトと決別する事になり、以降、彼自身の理論で人間の心の分析を続けていく事になった。多数の著作や研究結果を残し、彼は1961年に死去する。

ユング心理学の概略

ユングの心理学理論は幾つかの大きな特色を持っている。まず、第一に人間の心には2つの傾向や4つの機能があるとした事。次に、人間の意識には通常、認識しうる「顕在意識」の奥に「無意識」という領域があり、その更に奥には人類が共通として持っている「集合的無意識」という広大な領域があるとした事。そして、人間の意識には「元型」と呼ぶ、いくつもの特定の型式があると提唱した事である。これらの型式には「ペルソナ」や「シャドウ」「アニマ」「アニムス」「トリックスター」「グレートマザー」「ワイスマン」というものがある。また、人間はその心の奥に「自己(セルフ)」という中心を持ち、人間が人間らしく生きるためには、その自己を見つける自己実現が必要であるとしたのだ。これらの理論はユングの心理学として現在、様々なところで研究されている。


□学徒は上記を理解・記憶すること。この学習のポイントをまとめると下記になる。

・ユング心理学についての用語(2つの傾向と4つの機能。顕在意識・無意識・集合的無意識。元型)を記憶すること。


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