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西洋神秘伝統の歴史(古代〜紀元前3)

西洋神秘伝統の歴史(古代〜紀元前3)

ギリシャ神話。ヘルメス・トリスメギストスの誕生

オリンポス十二神(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Olympians.jpgより)

メソポタミア付近に限らず、古代のギリシャ付近でも、様々な文化が発達していた。ギリシャ独自の神話も多く作られ、それらは総称してギリシャ神話と呼ばれるようになる。この神話が体系的に纏められたのは、紀元前8世紀の詩人ヘシオドスによるといわれている。主神ゼウスを軸に、その妻であるヘラから、伝令と知識、商売の神ヘルメス、永遠の美青年アポロン、戦いの神アレス、知恵の女神アテナ、月の女神アルテミスなどの神々の活躍する、その壮大な神話は、現在の日本でも夜空の星々に、その登場する英雄や怪物達の名前が付けられ親しまれている。

この神話体系は、西洋神秘伝統にも大きな影響を与えており、その中でも特に重要な存在として”ヘルメス”と呼ばれる神があげられるだろう。このヘルメスはギリシャ神話では基本的に商売やずるがしこさという、現実世界に即した種類の知識を、人間に教えたりした神であったが、その神が、この時代のギリシャ人とエジプト人との交流によって、エジプトの秘密の叡智を司る神トートと同一視される事となる。そして、神人ヘルメス・トリスメギストス(三重に偉大なるヘルメス)へと変化し、秘密宗教や古代密議などに隠された叡智も現す、全ての知恵・叡智を司りあらわす神となった。

この神の重要性を現すものとして、西洋神秘伝統は、その別名として”実践ヘルメス学”との名称も持っている。また、ヘルメスの名を冠する”ヘルメス文書”という文書群も古代より伝わり、それらは重要な文書として扱われているのだ。そして、ヘルメスに限らず、それ以外のギリシャ神話の神々も、西洋神秘伝統ではその各々があらわす象徴的な力の源として、実際に召喚される対象となったり、護符に力をもたらす存在として、重要な存在として扱われる。これらからも解るように、ギリシャ神話の内容の理解は西洋神秘伝統の学徒にとっては必須となる。現在の日本は、このギリシャ神話について、様々な書籍が出版され容易に知ることが出来る。学徒はそのうち何冊かでも、基礎知識としてよく読んでおいてほしい。

ヘルメス・トリスメギストス(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Hermes mercurius trismegistus siena cathedral.jpgより)

ゾロアスター教と「魔術(magic)」の言葉の誕生。ユダヤ教の発展

ゾロアスター教の像の一つ

紀元前10世紀頃からは、ペルシア付近でゾロアスターの興した宗教である「ゾロアスター教(拝火教)」が、その勢力を広げてくる。ゾロアスター教の神官はmagus(メイガス)あるいは複数形でmagi(マギ)と呼ばれ、この神官マギの扱う、当時にあっては不思議な技術がmagic(魔術)と呼ばれ、現代のmagicという言葉のルーツになったとされるのだ。後に、イエス・キリストの誕生の祭に供物を捧げた、東方の三賢者と呼ばれる存在は、このマギという存在であったとされる。ゾロアスター教というと、古代の宗教と考える者もいるかもしれないが、この宗教の信者は今でも世界の各地で活動している。

また、ダビデ王とソロモン王の死後、衰退していった古代イスラエル王国は、紀元前930年頃に、古代イスラエル王国を構成していた十二支族のうち、北の十支族がダビデ王の一族の支配から独立。これにより、古代イスラエル王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国の2つに分かれてしまった。そして、紀元前722年頃に北のイスラエル王国はアッシリア帝国に滅ぼされてしまう。紀元前625年頃にはメソポタミアの南部を中心にカルデアの将軍ナボポラッサルが新バビロニア王国を建国。そのナボポラッサルの長男ネブカドネザルが王の時代に、ユダ王国は、新バビロニア王国との争いに敗れてしまう。そして、紀元前587年、エルサレムとエルサレム神殿は破壊され、ユダ王国の権力者たちはバビロニアへ連行される。これが歴史に名高い「バビロン捕囚」である。紀元前539年、捕囚されていたユダ王国の人々はユダヤの地へ帰還。この後、今に繋がる「ユダヤ教」が発展していく事となる。

カルデア人とバビロニア王国。古代の密儀(mystery)

牡牛を屠るミトラス(http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:BritishMuseumMithras.jpgより)

この頃には、世界のある程度の規模を持つ文明の都市では、大衆の礼拝や献納のためのさまざまな神殿が建てられ、その普及により一般大衆たちも神話や伝説に登場する様々な神や精霊達に、祈りを捧げる事が出来るようになっていた。そして、これらの文明から、人間たちにとって最重要なテーマの一つである自分たちの未来を知るという事を実現させるための占いの技術、自分たちの頭上を翔ける星から未来を予測する占星学というものも生み出されてくる。また、先にも挙げたカルデアの将軍によって打ち立てられたバビロニア王国によって、天文学や占星学、魔術も大いに発達。カルデア人はそれらの代名詞ともなり、後の世に生み出された、カルデアの名を冠した「カルデア人の神託」と呼ばれる文書は西洋神秘伝統に大きな影響を与えている。

それらの祈りの技術の中でも特別に自然の秘密と法則に通じ、太古から伝わってきた重要で効果あるものは、大衆を治めるべき超俗的な集団によって守り隠されていた。これが「密儀(mystery)」と呼ばれるものである。「密儀」の定義には「一定の時期に執り行われる神聖ドラマ」という意味もあり、その有名なものにはエジプトのオシリス・イシスやギリシアのエレウシス、ミトゥラ、オルフェウスの密儀などがある。密儀はその参加するものたちの意識を、ドラマによって高揚させ、特殊な意識の状態に持っていき、その意識状態で神や不思議な存在の秘密を受け取ることを主な目的とする事が多い。この密儀には、大衆の中からも特別に選ばれたもののみが参入を許される事があり、そのものたちは、古代文明の中心的役割を担っていた。


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anima mystica
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