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西洋神秘伝統の歴史(古代〜紀元前2)

西洋神秘伝統の歴史(古代〜紀元前2)

やがて、人間にとって知識の要ともいえる言語や文字などの記録技術が発達してくると、年月とともに民族に蓄えられた口伝などは記録され纏められていく。そして、それと共に人間が常日頃感じている超自然的なものや、様々な不思議な物事の由来を解説、説明する伝説や神話といったものが生まれ、それらを元にした原始的な宗教が生まれてくる。このような知識は世界の各地で様々な初期文化を発展させていくこととなるが、ここでは、その中でも特に西洋神秘伝統にとって重要なルーツとなるメソポタミアという土地、あるいはその付近のエジプトなどを中心に見ていこう。

古代メソポタミア(エデンの園、大洪水、バベルの塔などの故事のルーツ)

BC9世紀のアッシリアの有翼鷲頭精霊像

メソポタミア(ギリシア語で複数の河、あるいは二つの河の間という意味との事)、今のイラク付近ではティグリス河、ユーフラテス河に囲まれた”肥沃な三日月地帯”という土地があった。ここは、農耕や牧畜に適した土地と、その近くに湿地帯が多く広がり、様々な魚や鳥獣が豊富に取れるという、人間が生活していくのに理想的な土地であった。その為、多くの人間達が移り住み、集まった人間たちは文化を発展させる事となる。この理想的な土地は、研究家の間では、旧約聖書の「エデンの園」のモデルとなったのでは無いか?と提唱する者もいる。また、ティグリス、ユーフラテス河はごく稀に洪水を引き起こすこともあり、その特に大きかったものは旧約聖書に描かれる、「大洪水」のルーツとなったという説もある。

この土地には多くの人が移り住み、紀元前50世紀頃から様々な文化が現れたが、やがて紀元前40世紀頃からシュメール人によってその土地に一大文化が誕生することとなる。シュメール人は神聖国家ともいうべき都市を幾つも作り上げ、高度な文化を誇った。都市の中心にはジッグラドと呼ばれる巨大な神殿が作られ、そこでは様々な神々が崇められた。このジッグラドは後に旧約聖書に描かれる「バベルの塔」のルーツとなったとする研究家もいる。やがて、シュメールは有名なギルガメシュ叙事詩を生み出し、そしてこの土地にはアッカド、バビロニア、ヒッタイト、アッシリアなどの様々な文明が生まれては消えることとなる。

古代エジプト文明(西洋神秘伝統の叡智「真名」の誕生)

紀元前30世紀あたりからは、古代エジプト文明が大きく成長してくる。メソポタミアにも近いエジプトの土地では、同じように大きな河があった。その名はナイル。エジプト自体は、その土地の多くが広大な砂漠に覆われていたが、この偉大なるナイルの定期的な氾濫により、河の付近では土地が肥沃化。その為、河岸付近で農耕が大きく発展。そして、メソポタミアとの交易により、その文化も取り入れた彼らは、ファラオ(神権皇帝)を中心とした王族、神官による一大国家を形成する。

そして、この土地では現在の西洋神秘伝統、秘教的体系の主なルーツともいえる叡智が大きく花開くこととなる。エジプト文明が、西洋神秘伝統において特に重視されるのは、それまでの文明では神々や精霊には祈祷などによって自らの願望を”願う”あるいは”伝える”のみだったのだが、エジプト文明に置いては、神々を敬いながらも、自分の利益のためにそれらに願望を命令、強制、制御する為の技術、術式が発展したためである。

その技術の中心となる考え方が「真名」というものである。その秘密の名前=真名を知られた霊的な存在は、真名を唱えるものの前に現れ、その願いを叶える事を強制されるのである。これらの技術は王族のみに留まらず、少なからず、一般の人々にも扱われるようになった。エジプト神話が纏められ、オシリス、イシス、ホルス、ネフティス、アヌビス、セト等の主神クラスは主に王族などが扱い、巷に溢れる小さな神々や精霊は一般の人々の扱うところとなった。神官は魔術的な力・マナを使い秘儀を駆使し、ピラミッドでは秘密知識の伝授が行なわれた。

預言者モーセ。ソロモン王(古代イスラエル王国の盛衰)

律法の石板を抱いたモーセ(ギュスターブ・ドレ画)

紀元前13世紀頃、エジプトに旧約聖書で有名なモーセが誕生することとなる。モーセが生まれる前、古代のヘブライ人達はエジプトにおいて人口を増やし、その影響力を大きくしつつあった。そんなヘブライ人達をエジプト王族は疎ましく思い、圧政を強いていく。彼らを奴隷化し、その新生児を皆殺しするという命令まで出したのだ。その中、ヘブライ人の子供として生まれたモーセは、殺害を免れるため、両親によって川に流されてしまう。しかし、結局、エジプト王族に拾われて育てられることとなった彼は、成長していく中で、皮肉にもエジプト王族の秘儀を会得し、預言者としての知識と力を身につける事となる。

そして、成人した彼はある日、ヘブライ人と争うエジプト人を見かけ、エジプト人を思わず殺害してしまう。エジプト人から追われる事となったモーセは、その追跡の手から逃れるために荒野に隠れ住む。そこで、エジプト王族による圧政に苦しむ、ヘブライ人の状況を憂えた彼は、自分たちの”主”に訴えかけ、”主”からの導きの天の声を聞く事になる。彼は、その声に従い、ヘブライ人達を連れてエジプトを脱出する道を選ぶ。この物語を記録しているのが、旧約聖書の出エジプト記である。モーセに連れられて約束の地(カナン)を目指した彼らは、モーセを通して主から”律法の石板”、”十戒”を授かり、民族として”主”と”契約”を交わす。

石板は”聖櫃(アーク)”に納められ、やがて、カナンに辿り着き、そこで国家たる古代イスラエル王国を形成した彼らは、紀元前10世紀頃にダビデとその息子ソロモンを王とする時代に、その絶頂期を築く。ダビデやソロモンは、その王としての名高さゆえに、後の世にも様々な伝説を生み出す事となる。ダビテの血に連なるものには、やがてメシア(救世主)が誕生するだろうという事。そしてソロモンは、彼の智慧により、数々の悪霊さえも従えたという伝説も生まれ、後の時代にその話に倣って彼の名を冠した魔導書(ソロモンの鍵など)が数多く生み出されることとなる。しかし、ソロモンはその存命中に”主”以外の神の偶像も祀った為に、”主”からの怒りを買ってしまったと言われ、彼の死後、イスラエル王国は衰退してしまう事になる。


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